SDGsの最大の問題は、解決策の”量”の欠如

私たちの生きている世界では、毎年500万人の子どもたちが5歳の誕生日を迎えられずにこの世を去ります。

貧困撲滅は、SDGsが始まる遥か以前から続けられてきています。世界には、SDGsに真摯に取り組む素晴らしい人や組織はたくさんおり、昼夜を問わず全力で働いているのに、なぜ何十年経っても世界の問題は解決されないのでしょうか?

その端的な理由は、課題の規模に対して、投入される解決策の量が小さ過ぎることにあります。

SDGsのような地球規模課題に取り組む主要なアクターと言えば、従来国連や各国政府などの「公共セクター」が中心でした。

公共セクターの持つリソースは、実はそれほど大きなものではありません。

国連最大の組織である国連開発計画(UNDP)は、年間の予算額が約5千億円ほどあります。二国間援助ではトップドナーの一つである日本のODA予算額も正味でやはり5千億円程度です。このレベルの規模を持つSDGsアクターは数えるほどしか存在しません。さらに、その予算額は減少傾向にあります。

そして、国連や政府の開発援助資金というのは、国際政治や外交上の取引、政府や国際機関内での予算取り合戦、スタッフの人件費や活動費、業者への高い支払等々の中間プロセスにより、現場に届くまでには幾重にも天引きされたスリムなものになります。

政府の公式発表や新聞報道で飛び交っていた、「●●兆円」という国連や政府の行うSDGs達成のための開発援助や政策実施予算は、あくまで全てをひっくるめて一番大きく見える額に過ぎません。

また、実は国連や政府機関などの公共セクターはプロジェクトを遂行することに不向きです。

原資を税金に頼らざるを得ないことにより、リソースの限界、失敗への不寛容、厳しい説明責任、イノベーションを産みにくい官僚システム、政治と結びついた無意味な権力闘争等々、優秀な人は多くとも組織として致命的な弱点を抱えたまま仕事をしなければならないためです。

公共セクター出せる量のリソースでSDGsを達成するのは不可能ということは、実質的に国連や各国政府のコンセンサスになっています。

持続可能な世界のための市場を創る

最大規模の公共アクターの予算が5千億円程度なのに対し、民間セクターの方に目を向けると、ソフトバンクの売上高は9兆円、トヨタ自動車に至っては30兆円、、、と桁の違う数字が並びます。そして、同規模の大企業は日本の東証一部クラスで2千社以上あり、世界全体だと数万という数に上ります。

企業の売上高と公共セクターの予算を単純比較はできませんが、経済活動の規模やその活動が社会に与える影響力の大きさという意味では比較対象となり得ます。民間企業の方はその売上高に至るまでの組織全体の活動やバリューチェーン・生産プロセス等におけるパートナーを巻き込んだ活動を考えると、規模は更に膨れ上がります。

そして、民間企業の持つリソースは資金だけではなく、優秀な人材、イノベーションを興す技術、スピード感のある意思決定能力もあります。

凡そSDGsの課題を解決するために必要な全て備えていると言って良い状況です。

しかし、問題はそのリソースの使われる”方向性”です。

民間セクターは、基本的に収益を追求します。そのため、SDGs的な観点で言えば、貧困、不平等、環境破壊といった課題に対する解決者であるよりも、問題を発生させる側にいることの方が多いのが実情です。

大量の化石燃料を消費し、膨大なごみとCO2を発生させても、最終的に作り出す製品・サービスの品質が高くコストが安ければ市場競争に勝てるというルールであるならば、そうなってしまうのはある意味自然なことです。

社会的価値を重視する企業も多く存在します。しかし、一部の企業の高潔な理念やモラルに頼っているだけでは、SDGsのような地球規模課題を解決するのは困難です。

市場における「価値」の定義を、経済価値一辺倒から、経済価値と社会価値の合わさったものへと変えていく必要があります。

そのためには、SDGsに貢献する企業の価値を高く評価するようなルールに沿って全てのアクターが行動する新しい「市場」を創造していくことが必要です。

SDGsを解決したいと願う個人や法人の市場における顧客、投資家、労働者、事業パートナー、規制者等といった役割を通した一つ一つの行動の積み重ねが、こうした持続可能な開発のための市場を創り上げていきます。

私たちは、SDGsを達成するために挑戦を続ける全ての人と組織を「SDGsアントレプレナー」と位置づけ、その活動を支援することをミッションに活動しています。

一般社団法人SDGsアントレプレナーズ 代表理事 青柳仁士