SDGsは企業にとって新しいものであるため、取り組みを始めるにあたっては、組織として動くための経営の方針をつくる必要があります。しかし、方針はできたものの、組織や社員一人一人の行動にはほとんど変化が起きない場合が多くあります。これではSDGsの取り組みは表面的になってしまい、企業価値の向上にも繋がっていきません。なぜ社員の行動変化が起きないのでしょうか?典型的な例として次のような状況が考えられます。

1.トップの本気度が足りない・伝わっていない

企業がSDGsへ取り組みが始まる際には、主に、①経営層からのトップダウン、②CSRやIRなどの関係部署の業務、③意識の高い役職員による自発的なプロジェクトという3つのパターンがあります。これらのうち、最も社内への浸透や取り組みが進みやすいのは①のパターンとなります。②、③のパターンでは、社長にやる気がない、経営層で意見がバラバラで動けないといったことでやる気のある実行部隊の方々が悩んでいることがよくあります。一方、①のパターンでも、トップにやる気はあるものの、社員の側は数あるトップダウンの号令の一つとしてあまり真面目に受け止めていないことがあります。

2.社員の理解度が低く、CSRやコンプライアンスと区別がついていない

「SDGsに取り組む」という新たな経営からの方針を聞いた際の、社員の反応として、「会社にとってもっと大事な現状の業務(収益に直結する仕事)が忙しくて…」といった声が聴かれます。この反応の場合、現在の社内の共通価値観や組織文化の中で優先順位が低いため、渡された資料をざっと読んで分かったつもりになり、最低限のやっつけ仕事だけこなして終わってしまいます。

また、「ISO、コンプライアンス、働き方改革、環境配慮、個人情報保護、、、今度はSDGsか、どうせまたすぐ次が来るんでしょ。面倒くさいなぁ。」といった風に、“流行りもの”がまた来たと受け止められてしまうことがあります。

このような状態で企業のSDGs戦略を策定しても、各部署からのインプットが薄いため充実した内容にならず、策定後に旗を振っても一部の関心の高い社員しかついてきません。

3.組織の方針はあるが社員の価値観に影響していない。

経営戦略の研究で有名なマッキンゼー・アンド・カンパニーが考案した「7S」の理論によれば、企業を構成する要素は大きくハードとソフトの2つに分けられ、経営や事業の計画というハードは、組織文化というソフトに支えられていなければ機能しないと言われています。 SDGsでも同様の事が言えます。企業としてSDGsに対して立派な理念や方針・計画を掲げていても、社員の価値観がこれまでと変わらなければ組織や社員の行動変化には繋がりません。

良くある例として、多くの社員が、SDGsやサステナビリティの必要性は理解するものの、社内の評価として、結局のところ短期的な利益を産み出すことだけが重要であり、長期的な視点や社会価値の創出は「優先度の低いこと」という姿勢や考え方を根強く持っていることがあります。こうした中でSDGsに関する経営方針を周知しても、形骸化してしまいます。