SDGsの導入と実践に向けて企業がやるべきことはたくさんあります。にもかかわらず、まだ始めたばかりの段階で何をすれば良いか分からなくなり、取り組みが勢いを失ってしまうことがあります。

1.自己流の限界で壁にぶつかり、次の一歩が浮かんでこない

SDGsに関する情報はもともと国連や政府などの公的部門から発生している性格上、企業の方には理解しにくい内容も多く含まれています。また、SDGsに関するウェブ情報、書籍、セミナー・イベント、プログラム等は、SDGsに関する一般的な解説に留まっており、経験に基づき実際に活用するためのノウハウまでは踏み込めているものはほとんどありません。実経験に基づかず二次情報のみ構成されているものや、民間企業の文脈を踏まえていないものも多くあります。

そのため、たくさんの記事や書籍を読み、セミナー・イベント・研修等に参加しても、SDGsに関する知識の幅が増えるだけで、自社の実践に向けては深まっていきません。いくら調べても企業にとってビジネスで使うための「これだ!」という知恵に行きつかないため、最終的に「SDGsというのは要するにこういうことだ」という自己流解釈をして、進めていくしかありません。

しかし、自己流解釈の多くは過去に経験のあるものを参照しているので、例えばCSR活動やコンプライアンス対応のように「外部向けにとりあえず対応しておけば良いもの」というやっつけ仕事になったり、広報・ブランディングツールや統合報告書のコンテンツと勘違いして活動が矮小化してしまいがちです。結果として始まってすぐに次にすべきことが分からなくなってしまうか、もう取り組みは全て完了したと勘違いしてしまうことがよくあります。

2.外部評価に振り回され、本来目指す姿を見失う

SDGsの潮流は、企業を取り巻く環境に様々な変化をもたらしています。その変化がもたらす影響を端的に言えば、消費者、投資家、従業員、規制当局などから見た、「いい会社」の定義が変わってきていることといえます。この変化は、企業にとってさらに価値の高い存在に成長するチャンスであると同時に、今持っている魅力や競争力を失うリスクでもあります。

こうした中、あなたの会社がSDGsに取り組む目的は何でしょうか?すぐに思いつくのは、変化する外部環境の中で外から見た評価を高めようということです。しかし、これはやや視野の狭い見方といえます。初めから外部評価の向上を目的とすると、SDGsを利用してイメージ向上を図るだけで、社会にも自社にも実質的な変化が起きません。より望ましいのは、存在価値の高い会社を目指し、その結果として外部評価を高め、競争力や収益力の強化につなげていくという方法です。

存在価値とは、広い意味での企業価値です。その企業が存在することにより、本質的に地球と人類の繁栄に貢献しているかどうかを意味します。世界にとって存在価値の高い会社は、外部評価も後から追いついてきます。しかし、その逆は定かではありません。

外侮評価だけを高めようとする取り組みには深みがなく、ESG投資やサステナビリティ報告の評価尺度も乱立し、かつ変動している中、こうした近視眼的な考え方をしていると、いったい自社は次の一歩として何をすれば良いのかが分からなくなってしまいがちです。

3.取り組みが一週目で終わり、サイクルになっていない

SDGsやサステナビリティに基づく目標は一度立てたら終わりで、後はそれを何年もかけてゆっくりと実行していくようなものではありません。SDGsやサステナビリティはこれまでのCSRやコンプライアンスなどとは異なり、より大規模な社会と市場の変化であると同時に、唯一の確定した基準やガイドラインが存在しません。そのため、ほとんどの企業が最初に設定した目標や取り組みが今後も正解であり続ける可能性は極めて低い状況です。

そのため、SDGsの実践は今の取り組みを今後も継続していくようなものではなく、何度も評価と改善を重ねて成長し続けていくサイクルのようなものだと認識するのが正と言えます。その意味では、目標を立て、実行しただけの段階は、企業によるSDGs実践の全体像のうち、第一段階でしかありません。

1週目を終えた企業は、その後、何をすれば良いのでしょうか? それは、立案した計画をもとに、事業を通して実行し、評価と改善を経て、次のサイクルに繋げていくことです。 今すぐ始めるべきことは、1週目のプロセスを完結させることに加え、2週目以降へ取り組みを繋げていくことで、自社の存在価値を向上させ続けるサイクルを確立することです。

サイクルを回し続けることで、経営の理念や方針、経営管理、組織文化、及びそれらの実践や評価の方法を洗練させ続けることができます。同時に、実践のプロセスを通してSDGsや社会課題起点でビジネスを考え、自ら動ける人材を育て、組織としてのノウハウを強化していくことができます。