SDGsとは、世界を持続可能にするための目標です。しかし、それは同時に自社を持続可能にするものでもあります。
1.持続不可能な世界で自社だけ持続はできない
新型コロナウィルスの感染拡大によって全ての人々と組織が実感した通り、私たちの住む現代のグローバル化した世界は、ある遠い地域で発生した社会課題が瞬く間に全世界に影響し、企業の経済活動そのものを根底から止めてしまうリスクを孕んでいます。これは、COVID-19だけではなく、気候変動や国際政治不安など、SDGsの示すあらゆる課題において同様の状況にあります。
こうした中、企業は社会や経済への影響を考えずに利益のみを追求した活動を続けることはできない状況にあります。「企業は収益を追求することで経済成長を促しており、納税、法律順守、雇用創出といった社会価値を産み出すことで充分である」といった詭弁はもはや法律的にも市場競争ルールの面でも通用しない時代がやってきています。
持続可能な世界の実現に自ら積極的に貢献することは、自社の持続可能性を根底から脅かす政治、経済、経済、環境といった外的リスクへの対処であるとともに、切羽詰まった国際社会による急激な規制と市場競争ルール変化への対処であり、今すぐ本格的に始めて先行することが、自社の持続可能性を飛躍的に高めることに繋がります。
2.長期的に人々と世界に必要とされる会社になる
国際政治のパワーバランスの抜本的変化やテクノロジーの急速な発展による生活様式の変化などにより世界全体で混沌さが増す中、もともとVUCA(Volatility・変化が激しい、Uncertainty・不確実、Complexity・複雑、Ambiguity・曖昧)といわれていた現在の企業を取り巻く市場環境は、新型コロナウィルス感染拡大によって更に見通しの立たないものとなってきています。
先の見えない状況の中では人々も企業も不安になり、守りの姿勢に入りがちになります。しかし、企業が生き残る道は保身ではなく、環境変化に合わせたイノベーションの創出だと言われており、近視眼的なものの考え方では、大きな決断に必要な指針を持つことが難しい状況にあります。
そのような中にあっても、企業が生き残り、成長を続ける唯一の方法は、長期的に人々と世界に必要とされる存在であり続けることです。その道標となるものがSDGsです。SDGsに取り組むことで、企業は自らの存在価値を高めると同時に社会価値を産み出す姿勢や能力を培い、結果として自らの持続可能性を高めることができます。
3.世界と人類の発展の方向と自社の方針を合わせる
SDGsとは持続不可能になってしまった今の世界を持続可能にするための課題のリストです。SDGsへの取り組みとは、それらの解決を目指す人類全体の協力活動に参画することを意味します。世界の発展、あるいは、人類の進化の方向に自社のベクトルを合わせる事といえます。
一日一万人近くの子どもの命を奪う慢性的な栄養不足、差し迫った新型コロナウィルス感染拡大、豪雨や異常気象で身近に体感するようになった気候変動、大勢の人命に関わる東日本大震災のような自然災害、米中対立による世界の不安定化と日本への影響等、社会課題に思いを馳せるとそれらを解決したい、解決しなければならないという気持ちがそれぞれの人の中に湧き上がってきます。
これは、どんな生い立ちや問題意識を持っている人であるかによって関心の対象や度合いは全く異なります。そして、強い関心や共感を持つ人々は自身の務める会社の仕事を通してそれらに貢献できるのであれば、待遇や昇進とは全く異なるモチベーションで全力で仕事に打ち込み、高いパフォーマンスをあげるようになるでしょう。なぜなら、多くの人が考える人生の目的とは会社の収益を上げることではなく、自分らしく幸せに生きる事や、意味があると思えることに打ち込むことだからです。
これは本質的に正しい方向へ会社の方針を合わせることで、社内を活気づけ、会社の潜在能力が発揮することにより、自社の存続に必要な活力を継続的に産み出すことができます。その最も簡単な方法が、SDGsに取り組むことといえます。