年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)が2019年に日本の上場企業向けに行ったアンケート調査では、96.7%の企業が、SDGsを認知しており、内容まで知っていると回答しました。 lSDGsが成立する前は、ほぼ0%であったという前提を考えると、SDGsは発足から数年で驚異的なスピードで日本のビジネスセクターに浸透していることが伺えます。

また、同じ調査で、「取組みを始めている」と答えた企業の数は倍増し続けています。「取組みを検討している」と答えた企業も含めると、2020年の時点で9割を越えています。大企業において、SDGsは既に標準化しているのです。

SDGsに取り組むことで、製品・サービスの販売や事業運営の継続と成長の土台となっている消費者・取引先、株主・投資家、従業員・外部人材、規制当局など、市場を形成するステークホルダーからの信用と共感を拡大させることができます。

1.消費者や取引先の社会課題意識に対応する

これまで、市場において商品が選ばれる基準とは、主に品質やコストといった直接的なメリット、すなわち経済価値でした。しかし、こうした社会課題意識の高まりとともに、多くの法人や個人の顧客にとって、社会や環境にとってのメリット、すなわち社会価値が、経済価値に加えて重視されるようになってきています。これは、企業同士の協力において、パートナーを選ぶ基準でも同じことが言えます。 lSDGsの潮流を理解していないと、知らない間に市場価値が変わっており、先に対応を進めていた競合他社に優良顧客やパートナーを取られてしまうリスクもあるのです。

2.ESG投資の急速な進展に対処する

企業が SDGs に取り組んでいるもう一つの大きな理由として、株主や投資家の意識の変化があります。 株式市場において、SDGsと同じ方向性を持つESG投資の標準化が急速に進んできており、上場企業や、これから株式公開を目指す企業は、その対応に迫られています。 lESG投資は、株式市場において投資家が企業を選ぶ基準を、先ほどと同様に、経済価値のみから経済価値と社会価値の両方へと変化させる動きです。

3.優秀な人材を惹き付け、士気高く働いてもらう

l顧客や投資家以外に、企業がSDGsに取り組んでいる重要な理由の一つに、従業員の働き方に関する意識変化があります。 「ミレニアル世代」と呼ばれる2000年以降に成人を迎えた若い世代を中心に、勤め先を選ぶ基準として、社会的価値の高さを重視する人が増えてきています。 デロイト・トーマツ・コンサルティングが毎年行っているミレニアル世代向けの意識調査によれば、「人生の目標」に関する調査項目において、「社会に好影響をもたらすこと」は、「会社の幹部になること」や「家庭や子どもを持つこと」よりも重要視されています。 l企業にとって、優秀な人材の確保は重要かつ困難な課題です。それだけでなく、採用した後、途中で辞めずに、前向きにモチベーションを高く持って働き、成果を出し続けてもらうことは、さらに難しいことです。 会社の業務の中でSDGsに貢献できる仕事があること、また、それによって社会の役に立っていると感じられることは、優秀な人材を惹きつけ、従業員の士気を高める上で、とても重要な役割を果たします。

4.外部からのサステナビリティの要求に応える

lさらに、世界全体でサステナビリティ、すなわち、「企業が世界の持続可能性に与える影響」、についての基準が整備され、それらに基づく規制や報告義務の強化が急速に進んでいます。 例えば、EUで議論されているサステナビリティ基準に基づき、2017年にイギリスとフランスの政府は2040年以降のエンジン車販売禁止という政策を打ち出しました。 この定義の中では日本の自動車メーカーの主力であるハイブリッド車も販売禁止の対象となっており、系列の部品会社等も含めて数十万社に影響が及びます。 取り組みが遅れた企業は、規制の影響を受けて不利な立場に置かれます。 さらには、「社会価値の低い企業」という不名誉なレッテルを貼られるリスクも高まっていきます。