責任投資原則(PRI: Principles for Responsible Investment)とは、2006年に当時の国際連合事務総長であったコフィー・アナン氏が、金融業界や機関投資家に対して提唱した新しい投資の原則です。

これまで、株式市場における企業の価値とは、財務的価値、すなわちキャッシュフローや利益率を意味していました。PRIは財務価値に加えて環境、社会、企業統治といった非財務価値をを加えて企業価値を定義するESG投資という考え方を提唱しました。

金融機関など機関投資家が投資の意思決定を行う際には、意思決定プロセスに投資先となる企業の、ESG問題と呼ばれる環境(Environment)・社会問題(Social)・企業統治(Governance)への取り組みを考慮・反映すべきとした世界共通のガイドラインとしての性格を持っています。

責任投資原則制定の背景には、国連が掲げている2030年までに達成すべきSDGsにおいて、各国の政府やNGOやNPOなどの非政府組織の協力だけではなく、機関投資家(政府系金融機関、生命保険会社、銀行など大口の投資家)の協力も欠かせないとの判断がありました。

機関投資家は投資において、企業の売上や利益だけを判断材料にするのではなく、財務諸表上からは見えにくい企業のESG問題への取り組みを配慮すべきであり、またそれに基づいた投資は結果的に企業の持続的成長につながるとの考えに基づいています

責任投資原則には下記に記載する6つの原則と、それぞれの原則に紐づく35の具体的な実施例が記載されています。

(1)ESG問題に配慮した投資分析・意思決定をすること
(2)ESG問題に配慮した資産保有者となること
(3)投資先に対してESG問題への取組状況の開示を要求すること
(4)機関投資家などの資産運用業界が責任投資原則を受け入れ、実行されるよう働きかけること
(5) 責任投資原則に基づく投資効果を高めるために相互に作業し協力すること
(6) 責任投資原則の実行に関する活動状況や進捗状況を報告すること

この原則に法的拘束力はありませんが、https://www.sustaina.org/ja/links/pri/によると、2020年11月2日時点で世界では3470社が、日本企業では87社が署名しています。 

この責任投資原則は他の投資家にも採択・署名されることが推奨されており、企業のSDGsへの取り組みはますます注目されていきます。

Principles for Responsible Investment