サステナビリティの取り組みは、ややもすると外部からの評価を高めることが目的になりがちです。しかし、目的が外部評価の向上になってしまうと、サステナビリティの取り組みは単なる企業のイメージアップ活動になってしまい、社会にも自社にも実質的な変化が起きません。また、良いことだけを公表して、都合の悪いこと、できなかったことに関する情報を隠しても、社会はそれを見透かすものです。

そうではなく、本当にサステナビリティと向き合い、持続可能な世界の実現に貢献することで、長期的に人々と社会から必要とされ続ける存在になることが重要ではないでしょうか。そのためには、都合の悪いところもひっくるめて公開し、世に問うことが必要と言えます。

社会から必要とされる企業になることを目指している事例としてユニリーバを紹介します。

「サステナブルな暮らしを”あたりまえ”にする」

「サステナブルな暮らしを”あたりまえ”にする」ことをパーパスとするユニリーバは、2010年にユニリーバ・サステナブル・リビング・プラン(Unilever Sustainable Living Plan 2010 to 2020、USLP)という持続可能な成長のための2020年までの目標を3つ設定しました。

【Unilever Sustainable Living Plan 2010 to 2020の目標】
・10億人以上の健康と福祉の向上
・環境負荷の半減
・何百万人もの生活の向上

この目標の達成に向けて、ユニリーバは食品の塩分・砂糖の低減、トランス脂肪酸の使用停止、商品パッケージ原料削減による廃棄量・コストの削減、自社工場からの温室効果ガス排出削減などを行いました。

そして、目標年の翌2021年に10年の活動を振り返ったレポートを公表し、達成した多くの目標のほか、外部評価に影響が出る可能性があったにも関わらず、未達成となった目標があることやそこから得た学びについても積極的に開示しています。

教訓を企業戦略として統合し、株主の支持を獲得

その後、USLPの成功と失敗、そして教訓を反映させ、ユニリーバ・コンパスUnilever Compass)を策定しました。未達成のものが特に多かった環境分野では、クライメート・トランジション・アクションプラン(Climate Transition Action Plan)としてまとめています。2030年までに自社の事業所内での温室効果ガスの排出ゼロや、2039年までにバリューチェーン全体で排出量ネットゼロとするなどの意欲的な目標を設定しています。

2021年5月の年次株主総会で、このアクションプランについて賛否を問う株主投票を実施したところ、意欲的な目標にも関わらず、99.6%の賛成票を獲得。圧倒的な支持を得ました。

達成できなかった事実やその理由は、外部評価にはネガティブな影響があるかもしれませんが、ユニリーバはあえてその内容を公表しました。更に、そこで得た教訓を活かして実質的な変化を目指す戦略やアクションプランに進化させました。

これらはいずれもパーパスと真摯に向き合い、持続可能な社会の実現にむけて社会から必要とされる企業を目指したからこそできたとことと言えます。そして、そのプロセスを含め透明性を持って情報開示をしたことが、結果として株主からの高い支持につながったのです。