概要と特徴

第18回企業白書【企業白書2022】は、2022年1月に9年ぶりに経済同友会から発表され企業の価値創造に関する提言です。「人間及び人間社会の本質的欲求と企業経営」と題された本白書では、SDGsが企業経営の本質として触れられています。

経済同友会は、企業経営者が個人として参加し、各企業や特定業種の利害を超えた幅広い視野から国内外の諸問題について考え、議論し政策提言を行っています。

本白書も提言として、経営者に規制や世論の要請に基づく義務的・受動的な対応ではなく、能動的で本質的なアクションを取るよう促していますが、文面からは強い危機感が感じられ、まるで経営者に対して「しっかりしろ!」と叱咤激励しているような印象を受けます。

本白書は、企業経営の本質として、「人間及び人間社会の本質的欲求」を理解し、「人間社会のあるべき姿」を考え、それを「人間社会の長期ビジョン」として描き、価値創造することとしています。

そして、SDGsはそうした長期ビジョンの一つであり、企業がSDGsを推進することは社会貢献活動として捉えるのではなく、人間社会の本質的欲求を捉えた価値創造そのものであると喝破しています。また、企業にはイノベーションを起こし、社会課題に対するソリューションを提供することで、課題解決を通じた新事業創造を目指すことが求められるとしている点は正鵠を射ていると言えます。

更に、企業が人間社会の長期ビジョンを描き、人間社会の本質的欲求を捉えた価値創造を継続するために必要な能力を、①リーダーシップ、②組織・企業文化、③人材、④オープンイノベーションの4つの視点から捉え、それぞれに「あるべき姿」、「現状」、「打ち手(例)」が示されています。

日立製作所、味の素、キッコーマンなどの事例紹介や、一橋大学の野中郁次郎名誉教授の「ヒューマナイジング・ストラテジー」 の寄稿も掲載され、本質的で質の高い内容で構成されており、一読の価値のある白書と言えます。