GPIFの2018年度のESG活動報告です。
GPIFは年金積立金管理運用独立行政法人の略称で、日本における年金の安定的な管理・運用を行なっており、現在運用資産額が約162兆円である世界最大の機関投資家です。
GPIFが国連のアナン前事務総長が提唱した責任投資原則(PRI)に2015年に署名し、ESG投資に舵を切ったことは記憶に新しい方も多いのではないでしょうか。
GPIFは毎年、ESG投資の活動が期待通りの成果を上げているのかを毎年検証し、ESG活動報告書としてまとめています。本レポートは2018年度の報告書となっています。
この報告書では第1章にGPIFのESGに関する取り組みが紹介され、第二章にESG投資の効果測定がなされています。
ここでは特に企業の皆様が気になるであろう第1章に焦点を当てて説明をします。主な内容は以下のとおりです。
ESGに関する取り組み
- グローバル環境株式指数の選定とESG指数に基づく運用
- 同業種内において、炭素効率が高い(売上高あたりの温室効果ガス排出量の少ない)企業に重点的に投資することで、ポートフォリオ全体の温室効果ガス削減を目指す。
- 2018年9月に「S&P/JPX カーボン・エフィシェント指数」(国内株式向け)と「「S&P グローバル大中型株カーボン・ エフィシェント指数(除く日本)」(外国株式向け)の二つの指数を選定し、約1.2兆円規模で運用を開始した。
- 他にも2017年7月には三つのESG指数を選定・公表し、約1兆円のパッシブ運用をスタートした。現在は約3.5兆円の運用規模となっている。
- 気候変動関連イニシアティブへの賛同
- TCFDへの賛同を2018年12月に表明しており、また2018年10月からClimate Action 100+にもサポーターとして参加するなど、気候変動問題に積極的に取り組んでいる
- 株式・債券の委託運用におけるESG
- GPIFが運用会社を評価する一環として、「ESGを投資分析及び投資決定に明示的かつ体系的に組み込む」というESGインテグレーションを検討しており、またスチュワードシップ活動の評価も行っている。
- 運用会社に対し、グリーンボンドへの投資を、世界銀行グループのIBRDおよびIFCが提案することとなった。
- 運用会社に対し「優れた統合報告書」「改善度の高い報告書」「優れたコーポレート・ガバナンス報告書」の選定を依頼しており、上位企業は本レポートに掲載されている。
- 運用会社が重要と考えるESG課題も掲載されており、気候変動が今まで以上に重視されていることが確認されている。
- ESG評価会社との対話も重視しており、ESG評価会社にコンタクトを取る業も年々増加している
- オルタナティブ資産運用におけるESG
- オルタナティブ資産についてもESGに対する考慮を行なっている
- 運用会社選定時にもESGの取り組みを審査し、選定後もモニタリングを行い、また評価基準の見直しも行った。
- ESG情報開示についての委託調査研究
- 企業のIRについては、各情報開示基準の共通点を意識してまずは行い、その後ESG投資戦略の多様性にも留意しながら戦略的に開示範囲を拡大していくべきである。
- 基準の共通点・差異を明確化し、整合性を高めるため、Better Alignment Projectを2018年11月より開始している。
ESG投資の効果測定
- ESG指数のパフォーマンス、及びGIPFのポートフォリオにおけるESG指数は上昇傾向にある。
- 日本のESG評価は改善しているが、他国に劣っている箇所も多い。
- 日本のESG評価間の相関において、外国企業では前年度よりも正の相関が強まったが、日本企業では横這いである。
- 女性の活躍について、情報開示に関しては着実な改善があるものの、実績値は依然低い状態に止まっている。
- ガバナンスに関して、独立社外取締役の選任状況、および政策保有株式削減状況は改善していることがわかる。
- カーボンフットプリント、カーボンインテンシティに関しては、ポートフォリオ上の保有総額や業種別に偏りが大きくなっている。
- 現在のポートフォリオでは気候変動のいわゆる2℃目標の達成には難しい。GPIFとしてはダイベストメントではなく、課題のある企業に改善を促すことで2℃目標との整合生を保っていきたい。
- 気候変動関連情報の開示においては、国内の株式・債券共に海外に劣っている。
発行元:年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)
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