ゲスト:富士メガネ 会長兼社長 金井昭雄さん
パーソナリティ:弊社代表理事 青柳仁士 / フリーアナウンサー 魚住りえ

1.オープニング・トーク

(青柳)

最近日本は地震が多いですが、地震のような災害時に何を思いますか?

(魚住)

私は近視なのでこのまま外に出てしまったら、使い捨てのコンタクトの用意もないしどうしよう、と思ってしまいますね。

(青柳)

そうですよね。日本では災害時によくそのように思いますが、海外では情勢不安や恐慌など「何か」が起きた時に命の危険にかかわる人々、特に貧困層の人たちがいます。このような人たちをどのように救うかを考えることが重要で、これはSDGsの理念にもあります。本日は視力や眼鏡という分野で民間企業としてこのような人たちを救うための取り組みをしている企業のゲストの方をお呼びしています。

2.サステナフォーカス

(青柳)

本日のゲストは、富士メガネ 会長兼社長の金井昭雄さんです。本日はよろしくお願いいたします。

(魚住)

1939年に設立された富士メガネは、現在北海道札幌市を拠点とし、関東地方など全国で65店舗を運営する、眼鏡と補聴器の専門店です。金井さんは、1983年に海外難民視力支援活動を開始し、依頼UNHCR(国連難民高等弁務官事務所)との協力のもと、海外での難民支援活動を継続されています。こうした取り組みが評価され、ナンセン難民賞を日本人として初めて受賞したほか、多くの賞を受賞されています。

(青柳)

改めて、富士メガネの海外難民視力支援活動についてお教えいただけますでしょうか。

(金井)

UNHCRの要請で、海外の難民キャンプや国内避難民の居住地を訪問し、一人ひとりに視力検査を行い、それぞれに合った眼鏡をその場で無償で提供するという活動を行っています。

(青柳)

どのようなきっかけでこのような活動が始まったのでしょうか。

(金井)

アメリカに留学し、オプトメトリーの資格を取得した後、同僚に誘われたアリゾナにあるネイティブアメリカンの居住地で視力スクリーニングのプロジェクトに参加し、その際の深い感動的な経験が、帰国後の海外難民視力支援活動の原点になっているように思います。

(魚住)

難民支援と聞くと、食糧や予防接種などを連想することが多いと思います。そのなかで眼鏡を提供するという活動は非常に珍しいことではないかと思うのですがいかがでしょうか。

(金井)

眼鏡を通した難民に対する視力のケアというのは、国際的にみても事例は多くないと思います。1983年にタイの難民キャンプに初めて行きましたが、その際にも眼鏡よりもビタミン剤が欲しいだったり、レントゲン車の購入のための寄付を依頼されたりとびっくりした経験があります。しかしこの活動を通していく中で難民の方に非常に喜んでいただけることが多くなり、反響も非常に大きくなっています。

(青柳)

国際機関が主導となって難民の人々に読み書きなどの教育をしたり、職業訓練をしようとしても、そもそも遠視で文字が見えていませんということでは意味がないわけですね。そういう点でも地に足のついた活動なのだと思います。国際機関は予算ややれることがが決められている中で、視力の支援を通じて現場に将来の希望や生きる希望を提供していくということを民間企業との協力で実施できるということは、素晴らしい活動だと思います。

日本の国内でも支援活動を行っていると聞きましたが、どのような活動でしょうか。

(金井)

中国の残留孤児の方に眼鏡を差し上げていました。その他には10年前に起こった東日本大震災際には、1万2千組の眼鏡を送ったこともあります。北海道で起きた地震の際にも被災証明書をもって店舗にお越しいただいたお客様に無償で眼鏡を提供いたしました。この際にも非常に喜んでいただけて、眼鏡の力、視力の補正の持つ力は非常に大きいんだなと実感いたしました。

(青柳)

富士メガネはこれから先、どのようなビジョンを描いていますか。

(金井)

SDGsには17個の目標がありますが、「誰一人取り残さない」というスローガンがあることから、人道支援が根底にあると思います。当社では引き続き海外での難民視力支援活動を中心に、企業としてできる限りのことをしていきたいと思います。難民支援活動に定年もありませんので、これからも体力の許す限り続けていきたいと思います。

3.クロージング・トーク

(魚住)

本日お越しいただいた金井さんのお話を聞いて、いかがだったでしょうか。

(青柳)

北海道の地方の企業の一つが、国際問題解決に貢献しているというのは非常に衝撃的でした。国際協力の場にはグローバルに活躍する大手の民間企業はもちろんありますが、思い一つで地方の企業でも何でもできてしまうんだなと実感いたしました。こういう事例がどんどん増えていくといいなと思いました。


注:本記事は放送内容の完全な書き起こしではなく、必要に応じて要約や加筆・修正を行っています。また、敬称は省略させていただいています。

「SDGsティーチャー」は、TOKYOFMで2021年10月まで放送されたラジオ番組です。
同番組では、サステナビリティを実現し社会課題を解決するための活動を行っている団体 や企業からゲストをお招きし、そのきっかけや今後の目標についてお聞きしました。

AuDeeのラジオアプリからも、過去の放送をご視聴いただけます。https://audee.jp/program/show/51837