2022年10月、イギリスの広告自主規制機関である広告基準局 (ASA:Advertising Standards Authority)は、世界銀行ランキング第8位のHSBCに対して、2021年にイギリスのバス停で使用された同社の広告がグリーンウォッシュに該当するとして当該広告を禁止する判断を示しました。

また、ACAは2022年6月にもイギリスの小売大手のテスコが販売している植物肉のプライベートブランド「プラントシェフ」の広告がグリーンウォッシュに該当するとして広告を禁止する判断を示しました。

HSBCとテスコの広告は何がグリーンウォッシュであるとされたのでしょうか?日本でもグリーンウォッシュに対して市場の目が今後強まっていくことが予想されます。本記事では、イギリスの事例からグリーンウォッシュに該当する理由とその対策についてみてみます。

HSBCの事例(バス停広告)

今回グリーンウォッシュの規制対象となったHSBCの広告は、2021年にロンドン市内のバス停に掲示された二点の広告です。同広告は海と森の画像に以下の文言が掲載された二点の広告です。

出典:Adfree Cities

気候変動に国境はない。海面上昇にも国境はない。HSBCは世界で最大1兆ドルの投融資を通じてお客様のネットゼロへのトランジションを支援することを目指しています。

(“Climate change doesn’t do borders. Neither do rising sea levels. That’s why HSBC is aiming to provide up to $1 trillion in financing and investment globally to help our clients transition to net zero”)

ASAサイトより引用(SDGsアントレプレナーズが翻訳)

気候変動に国境はない。私たちは125万トンの炭素を吸収するため、英国で200万本の植樹活動を支援しています。

(“Climate changes doesn’t do borders. So in the UK, we’re helping to plant 2 million trees which will lock in 1.25 million tonnes of carbon over their lifetime”)

ASAサイトより引用(SDGsアントレプレナーズが翻訳)

HSBCは虚偽の記載した訳ではありませんが、「広告が重要な情報を省略しており、そのため誤解を招くものであった」とされました。

「重要な情報」とは、HSBCが植樹を行う一方で6,500万トン/年の二酸化炭素を排出しているとされる石油・ガス関連企業をはじめ、温室効果ガスを排出している企業にも投資をしているという事実です。

また、ASAはHSBCのアニュアルレポートから同社が段階的に二酸化炭素排出産業への投資を低減させていく方針であることを認めつつ、2040年までは石炭火力発電事業への投資を継続する方針であることも判断の一因としています。

HSBCが植樹をして温室効果ガスの低減に貢献している一方で、実はその何倍もの二酸化炭素を排出する事業にも投資をしているということが広告からは理解できないことから、HSBCが企業全体としてカーボンニュートラルに取り組む企業活動の支援を行っているという「誤解」を顧客に与えると判断したのです。

テスコの事例

テスコは自社の植物肉のプライベートブランド「プラントシェフ」の広告がグリーンウォッシュに該当するとされました。

具体的には、動物肉のハンバーグから植物肉のハンバーグに切り替えることに関する以下の表現がグリーンウォッシュにあたるとされました。

(動物肉から植物肉への)ちょっとした変更が地球に変化をもたらす

(“a little swap can make a difference to the planet”)

ASAサイトより引用(SDGsアントレプレナーズが翻訳)

ACAは一般論として、植物肉が動物肉よりも環境負荷が低いということは認めつつ、テスコの植物肉には外国で収穫された植物を原料とするものが含まれており、その農法や輸送時を含む製品のサプライチェーン全体における二酸化炭素の排出を含めてもなお国内で製造された動物肉のハンバーグよりも地球環境に良いという証拠を示すことができなかったことから、グリーンウォッシュに該当するという判断をしました。

どうしたらグリーンウォッシュを防げるか?

ではどうしたらこのようなグリーンウォッシュに無意識にしてしまうことを防ぐことができるのでしょう?

イギリスの競争・市場庁(CMA:Competition & Markets Authority)は2021年にGreen Claims Code(グリーンであると主張するための規則)を策定し、見せかけではなく真に環境に配慮したものであることを確認するための6つの重要なポイントを定めました。

1. 真実かつ正確であること
2. 明確であること
3. 重要な情報を省略・隠さないこと
4. 公正で有意義な比較のみ行うこと
5. 製品のサプライチェーンを考慮すること
6. 証拠の裏付けがあること

イギリス競争・市場庁のサイトより(SDGsアントレプレナーズが翻訳)

HSBCは上記の3.に該当し、テスコは5.に該当したため、グリーンウォッシュと判断されました。

言われてみれば当たり前のことばかりとも言えますが、環境やSDGsに対して貢献しているという場合、いま企業に求められているのはありのままの姿を背伸びせずに等身大で語る姿勢と言えます。環境に優しくない活動があればその存在を認め、そして、それを改善していくことです。グリーン・クレーム・コードで示されたサプライチェーン全体を考慮することは、グローバルにサプライチェーンがまたがる場合は少しハードルが高いかもしれませんが、環境だけでなく人権などの社会面からもサプライチェーン全体を把握することの必要性は益々高まっています。

この機会にグリーン・クレーム・コードを使って改めてあなたの会社の広告やサプライチェーンをチェックしてみませんか。

参照サイト:
https://www.ft.com/content/197dbd75-e0a6-4c1a-aef8-3b6dc60b4baf
https://adfreecities.org.uk/2022/10/hsbc-adverts-banned-for-missing-detail-on-fossil-fuel-financing/