講演や研修等を通じてSDGsの普及促進の仕事をする中で、「そもそもあなたはなぜSDGsに取り組もうと思ったのか?」と聞かれることがよくあります。
SDGsに取り組む理由は人それぞれで、誰もがストーリーを持っていると思います。いつもはそれを聞くのがSDGsの仕事の楽しみの一つですが、ここでは、私の個人的なストーリーについて少しだけお話しします。
私がSDGsに取り組むことになった原体験は、JICA職員としてアフガニスタンで働いたことです。それまでも国際開発の勉強や仕事をしていましたが、アフガンで初めて、それまで巨大な存在だと思っていた国連や国際社会の予想以上に小さな限界を知り、同時に日本という国が持つ、持続可能な世界に向かって地球と人類の進歩をリードする潜在能力を感じました。
アフガンで働くことになったいきさつ
子どもの頃、父親が警察官だったことから、「仕事というのは社会の役に立つために働くこと」と思っていました。それに加えて、どうせなら「広い世界で勝負してみたい」、「最も困っている人の役に立ちたい」と考え、大学3年生の20歳の時に開発経済学のゼミを専攻し、そのまま国際協力機構(JICA)に就職しました。
JICAには期待以上に心躍る社会課題解決の仕事がたくさんあり、若いうちから重責を任され、思う存分やらせてもらいました。入社3年目にナイジェリアの首都アブジャのホテルで現地調査を終えた夜に徹夜で世界銀行と現地政府が作成した資料を読み込み、翌日の大臣会合の準備をしていたとき、「あっという間に夢が叶ったな」と思いました。
地球温暖化対策、貧困削減、平和構築、民間企業連携という最も興味のあった分野のプロジェクトを担当させてもらい、多い時は年に10回以上海外出張に出ていました。サウジアラビア、トルコ、ナイジェリア、インドネシア、中国、ケニア、ウガンダ等々、CNNやBBCが来るような大規模な国際会合から、ナイロビから車で6時間の山頂の村落まで、数多くの最前線の現場に行きました。
また、国内的には外務省と一体となった予算要求作業を通して、国会、財務省、会計検査院対応を担当し、日本の政府が動く裏側の仕組みを実感とともに理解することができました。
新しいプロジェクトを始めるためサウジアラビアへ
入社5年目には海外長期研修として2年間休職させてもらって米国に留学し、コロンビア大学で語学のサマースクールに通った後、デューク大学で開発政策学の修士課程に進みました。
1年後の夏には国連開発計画(UNDP)スーダン事務所のハルツームとカドゥグリという現場にて、プロジェクトスタッフとして働かせてもらいました。
その後、並行してノースカロライナ大学の大学院で国際政治・外交を学び、平和構築の専門資格を取得したことから、JICAの中の「紛争国要員リスト」に載ってしまったらしく、ある日JICA米国事務所長が突然大学にやってきて、復帰後のアフガン行きを告げられました。
当時アフガンは屈指の紛争国でしたが、若かったためか、「ようやく世界で一番困っている人たちのために働く機会を得た」と感じ、恐怖よりもワクワク感の方が圧倒的に勝っていました。
こうして、2008年の夏に大学院を卒業すると、準備のため1ヶ月だけ日本に戻り、そのままアフガンに赴任することになりました。