DAY20で見てきた通り、ESG評価機関は企業のESGスコアを投資家に提供し、その対価を得て活動をしています。しかし、企業名とスコアのリストだけを頼りに後は自分で投資判断を考えるというのでは、投資家側は大変です。スコアを投資家にとって使いやすいものにするにはどうしたら良いのでしょうか。

それは、提供されたスコアを適宜、投資判断に使いやすいようにスキーム化することです。このスキーム化はESG評価機関と投資家の双方により行われています。主なものに次の通りです。

1 ネガティブ・スクリーニング

スコアの著しく低い企業(ESGに対して顕著な悪影響を与えている企業)を投資対象から除外する方式です。これまで投資していた企業が投資対象から外れたために資金を引き揚げることはダイベストメントと呼ばれています。

2 ポジティブ・スクリーニング

スコアの高い企業を投資対象に選ぶ方式です。スコア上位の企業やESGに基づく規範をクリアしている企業のみを投資対象としてプールする方法も含みます。

3 ESGインテグレーション

従来の財務パフォーマンスに基づく投資分析の中に非財務情報を入れ込んで統合的に評価する方式です。

4 議決権行使・エンゲージメント

株主総会での議決権行使や株主提案など株主としての権限を活用して企業にESGへの要求を行う方式です。

2020年には京都市のNPO法人気候ネットワークがみずほフィナンシャルグループへに対し、年次報告での脱炭素行動計画の開示を義務化する定款変更を株主提案し、野村やニッセイなど有力国内運用会社も含め、機関投資家の約8割、全体の34%の支持が集まったことが話題になりました。

5 サステナビリティ・テーマ型投資

グリーンボンドやソーシャルボンドなど、サステナビリティや社会課題解決をテーマに掲げたファンドに投資する方式です。

6 インパクト・コミュニティ型投資

社会や環境へ好影響を与えている会社、そうした会社の行う社会課題解決への取り組み、及び社会的に脆弱な人々のコミュニティ等に対して投資を行う方式です。


投資家がESG投資を行う動機には、非財務パフォーマンスの重視と、財務パフォーマンスへの好影響への期待という2つがあります。SDGsの潮流は前者を増加させています。しかし、年金基金など他者の資金を運用している機関投資家には受託者責任があり、預かったお金に市場平均以上のリターンを確保することや不必要なリスクを負担させないことは義務となっています。そのため、投資家はSDGsへの賛同や持続可能な社会づくりへの共感だけでESG投資を行えるわけではありません。

これに対し、様々な調査により、ESG投資は長期的な財務パフォーマンス的に見るとややプラスの傾向があり、信用格付けとは正の相関関係が認められています。そのため、後者に対する期待も一定程度満たしているというのは株式市場における現時点での見方になっているといえるでしょう。

この状況が、受託者責任を有する機関投資家を可能にし、財務パフォーマンスのみを重視する投資家の参加を促すことで、規模の拡大に成功しているといえます。なお、各国の法制度で縛られている公的機関の受託者責任については、ESG要素はそもそも財務パフォーマンスの観点でも長期投資を行う上で当然考慮されるべき新しい必須要素であるとする見方もあります。

👉SDGs Eラーニング 応用編 「ビジネスパーソンのためのSDGs実践」