ESG投資が動いているメカニズムと、その中での企業の置かれている状況及び最適な戦略について説明してきました。しかし、大まかな戦略だけでは自社のESG評価を向上させるには十分ではありません。ESG評価を高めるために、企業としては具体的に何をすれば良いのでしょうか。それは、経営企画部などの担当部署が経営層及び全部門と協力しながら、具体的に一つ一つのESG対応作業を進めていくことです。

ESG評価の基準・指標が多数存在する中、自社に合った最適な対処法というのは企業の数だけ存在するため、現在実施されている方法も各社それぞれです。ここでは、日本企業の中で最もよく見られる対処手順を紹介します。

STEP1 参照する基準・指標及び開示項目を決める

ESG評価の基準・指標は乱立気味の状況にあるため、どれを参照するかは自社で決めなければなりません。GRIなどの主となる基準・指標を一つ選んでとりあえずそれに合わせている場合と、独自のルールに基づき複数を組み合わせて参照している場合とがあります。

評価の基準・指標にはサステナビリティに関する情報開示やブランディングのための基準や認証と、ESG投資の評価基準・指標(インデックス)の、大きく分けて2つの種類があります。 サステナビリティ報告の基準や認証として有名なものには、GRI、ISO26000、SASBなどがあります。 ESG投資で広く参照されているインデックスには、FTSE、MSCI、Dow Jonesなどがあります。 様々な組織により開発と普及が行われてきており、これ以外にも多くの基準、認証、ガイダンス、指標などが存在します。

それぞれの基準・指標の開示基準は具体的にはどんな内容になっているのでしょうか? ここでは、例としてGRIの基準について紹介します。 GRIの基準における評価項目は、経済、環境、社会の3つのカテゴリの全33個のスタンダードと、それらに紐づく複数の開示項目によって構成されています。 開示項目は、例えば「環境」のカテゴリの中の「エネルギー」というスタンダードには、「エネルギー原単位」という開示項目があり、内容についてここに示すような詳細な定義がされています。

STEP2 自社の非財務パフォーマンスを測定する

開示項目を自社の活動に当てはめ、求められている定量・定性的なデータを抽出します。この際、自社の活動とは、自社の製品やサービスが顧客のもとに届くまでの全ての事業活動を機能ごとに分割して考えます。 例えば、主な活動として、原材料の調達、製造、出荷物流、販売・マーケティング、サービスがあり、それらを支える横断的な活動として、全般管理・インフラ、人事・労務管理、技術活動、調達活動などがあります。さらに、製品の場合は、販売後の顧客による製品の使用と廃棄についても考慮に入れます。

STEP3 重点課題(マテリアリティ)を特定する

上記のSTEP2を通して、自社にとっての課題、すなわち、強みとして伸ばしていくべき正の影響と、弱みとして最小化していくべき負の影響が明らかになります。出てきた課題は、「自社にとっての重要性」と「ステークホルダーにとっての重要性」の2つの評価軸で優先順位をつけます。 ステークホルダーとは、顧客、株主、従業員、事業パートナー、規制当局、及び地域や社会全体など、関係する全ての人々や組織のことです。

STEP4 経営計画や外部向け報告書として取りまとめる

ここまでに特定した開示項目毎の情報・データと重点課題に、今後の目標、現在の取り組み、これまでの成果、及び重点課題を加えた情報を元に定性的なストーリーを検討して全体感を整え、経営の理念・方針・計画、及びESG情報開示ツールとしての各種の外部向け報告書に落とし込んでいきます。

情報開示という面でESG評価機関側から評価が高いやり方は、統合報告書を財務と非財務の両方のパフォーマンスに関する投資家向けの主要開示ツールとしつつ、財務面の詳細は従来からの各種IRレポート、非財務面の詳細はサステナビリティ・レポートとして取り纏める方法です。なお、年次・中期経営計画などを含む経営の理念・方針・計画などの情報はこれらに含まれているという前提です。

統合報告書は年次報告書をその代わりにしている企業も多くありますが、ESG評価の観点からは別にした方が評価に必要な項目を過不足なくとりまとめられるため、開示度でのスコアは高まる可能性が高いといえます。

サステナビリティ・レポートは、従来のCSRレポートや環境レポートを発展的に解消しただけの企業が多い状況ですが、自社独自のCSRの考え方や施策を並べただけの従来のCSRレポートと、評価基準・指標を意識してつくられたサステナビリティ・レポートとでは、実際にESG評価において開示度において明確な差が出ます。また、評価の中心となるデータ関連は別に取りまとめていると評価を行う側からはより分かり易いといえます。

ウェブサイトは上記掲載し、更なる詳細を含めて解説できる有用なツールでエスが、全体が評価者視点で整合性を持って説明されている企業は多くありません。そうした企業は総じてESGへの対応が進んでいるため評価の高い企業となっています。

なお、各企業において、これらの外部向け報告のベースは以前からあるIRレポートやCSRレポートであることが多く、それらとの違いがよく理解されていないケースも多く見られます。また、対応していても、GRIなどの評価項目を後付けでリストとして載せ、情報の参照元先を示しているだけという形多くあるのが実態です。

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