パーソナリティ:弊社代表理事 青柳仁士 / フリーアナウンサー 魚住りえ

ゲスト:株式会社バイオマスレジンホールディングス 代表取締役 神谷雄仁 様

1.オープニング・トーク

(魚住)

レジ袋が有料化されました。エコバックを利用される方が増えてきてます。これもSDGsに関連した社会の動きですよね?

(青柳)

そうですね。この話は、まずそもそもレジ袋ってなんなのかっていうことを説明しないといけない気がします。レジ袋っていうのは日本では「ビニール袋」か「ポリ袋」と呼ばれています。そして、ビニール袋って一般的日本で言われているもののほとんどは実はビニール製ではなくて、ポリエチレンかポリプロピレン。つまり、プラスチック。何が言いたいかと言いますと、世界全体において最も多くの人たちが手にしていて、かつ最もよく捨てられているプラスチックがレジ袋ということなんです。

(魚住)

そもそもプラスチックを捨てると何が問題なのでしょうか?

(青柳)

これは原料がそもそも化石燃料ですから、消費を続ければそのうち枯渇してしまいます。更には、自然界で分解されないんですね。今、世界全体で少なくとも年間800万トンの分解されないプラスチックが直径1ミリ以下の大きさになって海に流れ込んでいます。例えばアジア地域で採れる9割の食塩の中に直径1ミリ以下のマイクロプラスチックが含まれていると言われています。

ただ、海洋のマイクロプラスチックのうち、半分以上は漁業に使われるロープや網などの漁具。もう半分のうち最も大きな割合を占めるものがペットボトルなどのプラスチック容器で、レジ袋は実は1%もありません。

「じゃあレジ袋有料化意味ないんじゃん!」って怒る人もいるかもしれませんが、冒頭申し上げた通り、最も身近で最も多くの人たちが直に触れているプラスチックを削減することで、社会全体の機運を高めていこうという事なのだと私は理解しています。

2.サステナフォーカス

(魚住)

本日のゲストは株式会社バイオマスレジンホールディングス・バイオマスレジン南魚沼代表取締役の神谷一仁さんです。米どころ新潟県南魚沼市にあるバイオマスレジン南魚沼で、バイオマス資源を利用したプラスチック樹脂原料の製造販売、及び研究開発を行う会社を創業され、現在はホールデイングス会社の代表を務められています。これまでにお米を原料としたプラスチックから作られるレジ袋、そして小さな子供さん用のおもちゃなど様々な製品を開発しています。

(青柳)

今年の2月に新潟のSDGsフォーラムで基調講演をさせていただいたときにバイオマスレジンさんのプレゼンテーションを優良事例として初めて見させていただき、衝撃を受けました。お米を使ったプラスチックというのはほとんどの方にとって耳慣れないかと思うので、簡単にご説明いただけますか?

(神谷)

プラスチックは通常、石油から作られますが、近年は食物由来のバイオマス原料でつくられるようになっています。サトウキビやトウモロコシから良く作られるが、バイオマスレジンでは日本の伝統食であるお米からつくっています。お米は私たちに身近なものですが、熱を加えることによって粥や餅などいろんなものに変わります。これってプラスチックと似てるなと思ったのが、発想のスタートでした。新潟県の魚沼市で事業を始めたのは、日本で一番お米が集まっていて流通している場所だったからです。

(青柳)

お米からプラスチックを作り始めたのはいつ頃からなのでしょうか?

(神谷)

愛知万博が開かれた際に、環境問題に新しい分野でチャレンジしたいなという気持ち一つで始めました。今でも昨年の新潟で台風被害による河川氾濫で倉庫が水浸しになり、お米が水没して販売も保存もできなくなったといった農家さんの声を聞いて、収益とかではなく、純粋な思いで更に取り組みたいと思うことがよくあります。

(魚住)

南魚沼では最近米作りもするようになったと伺っています。これはまたSDGsに対する取り組みも意識されているんでしょうか。

(神谷)

そうですね。今日本の農業には高齢化が進んで後継者がいないなど、いくつか深刻な問題があります。そのために、耕作放棄地と呼ばれている放ったらかしの農地がすごく多くあります。日本全国だと耕作放棄地は滋賀県の面積を超えています。耕作をやめてしまって荒れ地になると元に戻すに5年ぐらいかかるんですよね。いったんそうなってしまうとすぐに農業ができる環境にはならないということもあって、じゃあもう我々が最初からそういったところから解決したいなと。

従来の農業と違うアプローチで最初から我々の工業用のお米を作ってみようかなということで始めました。美味しさを追求しないので、農家の長年の経験とか勘とかが必要じゃないんですね。

今はやりのAI 農業みたいなことにすると、プロのノウハウを数値化して落とし込むのがすごく大変なんですけど、私たちはそういうプロセスが入らないので新規参入ができるんです。そういった取り組みも通して新しい産業を地方に興せたら良いなという気持ちもあります。

新しい取り組みは楽しいですし、皆さん良く見てくださいます。こちらの地域でも一緒にできませんかっていうお話があちこちからきていて、福島県、熊本県、北海道などで、我々と同じようなビジネスモデルを適用できないかチャレンジしています。

(青柳)

SDGsは日本の政府や国連だとかが一生懸命旗を振ってますけれども、その先に一歩踏み込んでいくフロンティア精神とその行動は本当に重要ですね。そこからさらに他の地域でも産業ができてそれが広がっていけば、日本の地方が抱える様々な社会課題や地方創生を解決することにもなっていくんじゃないかと思います。ITという次世代の世界を席巻する新しい産業が米国のシリコンバレーで産まれたように、日本の地方が社会課題解決の産業を興す場所になっていくと期待したいです。

(神谷)

日本での社会課題意識の高まりとともに、どういうことをしたら我々も一緒に仲間に入れるのか、みたいなことも本当に多く問い合わせいただきます。自分たちがしっかりと続けていくということと、課題を解決するためにたくさんの人々を受け入れて、新しいことをどんどん取り入れて行かなければいけないという思いでやっています。

歴史的には、お米は弥生時代から2500年以上続けているまさに循環型経済の代表的といえます。地域としては日本にとどまらずアジアでもお米は主食です。私たちも中国やバンコクベトナムでこの日本のビジネスモデルを今始めようとしています。新潟地方から現代に始まったお米を介した一つのビジネスの流れを日本をさらにアジアまで広げていきたいなぁというのが我々の思いですね。

3.クロージング・トーク

(魚住)

本日のお話はいかがでしたか?

(青柳)

驚きがいっぱいありましたね。日本の新潟南魚沼という一つの地方で、日本の中小企業が世界最先端といえるお米のプラスチックをつくり、サーキュラーエコノミーの実現するための具体策というものを作り上げている。そして日本のいろんな地域とつながり、海外の中国やベトナムにも展開を始めている。これは本当に勇気をもらえる話ですね。

神谷さんのような方がたくさん増えてくると、日本の地方や中小企業全体が盛り上がってくるんじゃないかと思います。それに、地方の中小企業でそれができるんだったら中央の大企業は何やってんのって言われちゃいます。ですから自分たちももっともっとやらなきゃなっていう風に思ってもらえるんじゃないでしょうか。SDGsに取り組む全ての方々の胸の中にも熱い思いが生まれてくるのではないかと思います。

注:放送内容の完全な書き起こしではなく、必要に応じて要約や加筆・修正を行っています。また、ゲストの敬称は省略させていただいています。