ゲスト:サラヤ株式会社 コミュニケーション本部長 代島裕世さん
パーソナリティ:弊社代表理事 青柳仁士 / フリーアナウンサー 魚住りえ

1.オープニング・トーク

(青柳)

SDGsは日本で広く認知されてきたかと思うのですが、その一方でやってはいけないSDGsの取組が増えてきているのも現状です。それを「SDGsウォッシュ」と呼びます。これはSDGsに関する活動を誇張的に宣伝しつつ、実は大したことをやっていないといった状態を表します。投資の世界においてはそれを規制するための様々なルールがあるのですが、一般消費者がそれを知るのは難しいです。これを見極める方法として、認証マークがあるかどうか、またその企業自体がきちんとSDGsを行っているかどうかを考えて買い物をすることでSDGsウォッシュを減らし、消費者自身も賢い選択ができます。商品や企業の裏にあるストーリーに注目することが大切かと思います。

2.サステナフォーカス

(魚住)

本日のゲストは、先日ゲストにお越しいただきました、サラヤ株式会社 コミュニケーション本部長の代島裕世さんにお話を伺います。

1952年創業のサラヤは、半世紀以上にわたり感染予防の医薬品メーカーとして社会的課題に向き合い、環境・衛生・健康を事業ビジョンに掲げ、いち早くSDGs経営を実施してきたことが高く評価され、2017年には第一回ジャパンSDGsアワードを受賞しています。2019年11月には業務用含め国内販売商品すべてにおいて、持続可能なパーム油の生産・利用を目指す国際的な認証制度であるRSPO認証取得を宣言しています。

(青柳)

今回は、自然環境を大切にする商品づくりについて伺います。サラヤでは、ウガンダで人にフォーカスした取り組みをされたそうです。

(代島)

前回お話ししたシャボネットせっけん液は事業の柱の一つではありますが、我々の本業は感染予防の医薬品メーカーです。2008年に、ユニセフが「石鹸を用いた正しい手洗いによって5歳未満の乳幼児の死亡率を減少させる最も有効な手段である」とし、世界手洗いデーを定めキャンペーンを始めていました。そこでサラヤが戦後日本で培ったノウハウを途上国に移転できないかと考え、ユニセフの支援から始まりました。

このときにボルネオで学んだ、「ビジネスとチャリティーを両輪で回す」ことをアフリカのモデルにもあてはめようと思い、ウガンダでの支援を開始しました。

視察に行った際に医療現場では、アルコール消毒などをせずに医療行為が行われていて、院内感染の巣窟となっていました。その一方、ウガンダでは国内生産のジン(アルコール)が市場に広く出回っているのを知り、農業立国でありアルコール発酵に使う植物や国内での蒸留技術があることも発見しました。この視察を通して、サラヤの手が荒れにくく肌に優しいジャパニーズクオリティのアルコール消毒を現地で生産できればという構想が浮かびました。

JICAの海外協力隊やインストラクターによりアルコール消毒の普及活動を行ったところ、帝王切開後高確率で敗血症で亡くなっていた妊婦や、生まれて28日以内に下痢でなくなっていた乳児の数をゼロにすることができ、そのデータをもってユニセフから賞をいただきました。そしてウガンダ国内にアルコール消毒を普及させるというコミットメントをウガンダ政府が打ち出し、2014年にサラヤの現地生産工場を立ち上げました。

(青柳)

コロナ禍でアルコール消毒が欠かせない存在ですが、サラヤはどのような状況でしょうか。

(代島)

ウガンダにもコロナの影響が出ました。その際に現地で一番読まれている新聞の風刺画の中に書かれた消毒剤に【SARAYA】と書かれていました。現地ではアルコール消毒=サラヤと認識してもらえていることを実感いたしました。また2020年度の決算ではウガンダの事業で初めて億単位の利益を出すことができました。SDGsビジネスで黒字を出すのは難しい状況の中、非常に喜ばしいことだと思います。

(魚住)

最後に、サラヤとしての今後の展望を教えてください。

(代島)

リプロダクティブヘンスウガンダというNGO団体と組みまして、院内感染を防ぎ女性が安心して通えるクリニックの建設のプログラムを立ち上げました。私はプロダクトにメッセージを添えて提供することで、プロダクトがメディアにもなると思っており、この活動を通して感染予防の医薬品メーカーとしてウガンダ国内生産の消毒用アルコールの普及・宣伝をしていきたいと考えています。

またエシカルコスメを立ち上げて、スキンケアの新しいブランドから得られる収益をこのクリニック建設に活用しています。

3.クロージング・トーク

(青柳)

様々なお話を伺って特に思ったのは、イシュー(問題となっているポイント)を捉える点がサラヤはとても良かったのだと思います。院内感染に目を付け、その原因を突き止めたことから消毒液を普及させる活動を行い、消毒用アルコールの現地生産を始めて事業化したことが良い点です。SDGsの17のゴールの中でもどこに焦点を当てるのか、事業化させられるのかというポイントをうまく見つけ出し、黒字化していった点が成功のポイントだと感じました。

手洗い・うがいの習慣、これからも続けていきましょう。


注:本記事は放送内容の完全な書き起こしではなく、必要に応じて要約や加筆・修正を行っています。また、敬称は省略させていただいています。

「SDGsティーチャー」は、TOKYOFMで2021年10月まで放送されたラジオ番組です。
同番組では、サステナビリティを実現し社会課題を解決するための活動を行っている団体 や企業からゲストをお招きし、そのきっかけや今後の目標についてお聞きしました。

AuDeeのラジオアプリからも、過去の放送をご視聴いただけます。https://audee.jp/program/show/51837