パーソナリティ:弊社代表理事 青柳仁士 / フリーアナウンサー 魚住りえ
1.オープニング・トーク
(魚住)
新年あけましておめでとうございます。お正月といえば一年の目標を決めたりする方が多いと思います。私もSDGsの17の目標の中でどんなことに貢献できるか、と考えたりしていますが、家族で過ごす時間が多いこの時期に、色々とお話をされている方も多いかもしれませんね。
(青柳)
そうですね。ぜひSDGsに絡めた目標を立てていただければと思います。先日行った、ある企業様に向けたアンケートの中で「家族会議を行い、誰がどのゴールについて取り組みをするかを決めた」という回答があり、事務局の中でもこれは素晴らしいと話題になりました。個人としてできること、家族としてできること、企業としてできることはそれぞれ違いますので、ぜひ考えてみるといいですね。
2.サステナフォーカス
(魚住)
いつものサステナフォーカスではゲストをお呼びしSDGsに関する取り組みをお話ししていただくのですが、本日は2021年最初の放送ですので、新年特別企画ということで青柳さんがSDGsに携わるようになったきっかけや、SDGsに関する素朴な疑問に対する回答を、リスナーの方から寄せられた質問も交えながらお送りしたいと思います。
まずはきっかけについて、青柳さんは以前国連の広報官としてSDGsと関わっていたそうなのですが、どのような経緯でそうなったのでしょうか?
(青柳)
もともとは大学2年生の時に選んだゼミが『開発経済学』に携わるもので、開発途上国の経済を発展させるためにはどのような理論を使えばいいかというものでした。その時のゼミの先生がUNESCOで理事をやっている方で、その先生の話を聞くうちにいつか国連で働きたいなという思いがありました。
そして大学卒業後はJICAに入構し、その後国連で働く中で、10年以上世界の社会課題解決にかかわる仕事をしてきました。JICAにいたときにアフガニスタンに2年間赴任する機会がありました。
(魚住)
テロなどがあり安全ではないところですよね。
(青柳)
はい、市街戦なども何度も遭遇し、怖い思いもしたのですが、その時、日本政府やその他の政府系機関と協力してとしてやれることと、現場での問題の大きさはあまりにも違いすぎて、我々のやっていることは砂漠に水を撒くような小さなことのような感覚に襲われました。アフガニスタンで困っている人々を救おうとするには、このやり方ではだめだと感じたのです。国際政治の中で決まったことを実行する側ではなく、決定を下す国際政治のほうに行かなければ変わらないと思い、国連の本部でも働いてみたのですが、やはり国連の本部にいてもやれることに限りがあると感じました。そしてその経験を通して、民間企業に着目することになりました。
民間企業は予算(売上)が莫大であるだけではなく、人材や技術も数多く持ち合わせています。そんな大企業が日本だけでも2000社、世界では4万社もあるのに、これを利用しない手はないですよね。そこで企業を社会課題解決に向かわせるにはどうすればいいのかと考え始め、色んな企業と関われるコンサルティングファームで民間企業での経験を積み、再度国連に戻ってきたという経緯です。そして現在、民間企業がSDGsのために働くという社会の仕組みづくりや民間企業の活力を引き出す活動がメインになってきました。
(魚住)
2016年に国連の広報官としてSDGsの普及に努められたわけですが、5年経ち日本の国内の変化はどのように感じていらっしゃいますか?
(青柳)
はい、想像以上の変化を感じます。例えば2019年の上場企業のSDGsの認知度は99%に達し、中小企業においても2、3割になり、取り組みを始めた企業や検討を始めた企業は9割を超えている、というのはすごい変化だと感じます。今までは社会課題解決と事業を成立させていたニッチな領域に取り組んでいた企業が、今は潮流の真ん中にいるというのもすごいことです。
(魚住)
ここからはリスナーから寄せられたの質問をふまえてお送りしていきます。
ESGとは何ですか?
(青柳)
EはEnvironment(環境)、SはSocial(社会)、GはGovernance(企業統治)という意味で、投資の世界で使われる言葉です。経済価値や財務的価値だけで評価されるのではなく、非財務的価値(社会に対してどのような影響を与えているかなど)も踏まえて企業の価値を評価し株式市場のルールを作ろうという仕組みです。このESGを通じた市場は3400兆円となっています。
3.クロージング・トーク
(魚住)
最後に、青柳さんが描く『持続可能な社会』の展望をお聞かせください。
(青柳)
『持続可能な社会』を考える際に、“競争から協創へ”というキーワードがよくつかわれます。自分が勝てばいい、とう考えではなく、それを前提としながらより世界や全員にとっていいものを創り出す、そういう人や企業がもっと出てくること、認められることが持続可能な社会につながるかと思っています。お金儲けという一つの軸ではなく、もっと多様な軸で競争し、より良い社会へ変えていくことができる企業や人が認められる世界になっていけば、持続可能な社会を実現できると考えています。
注:本記事は放送内容の完全な書き起こしではなく、必要に応じて要約や加筆・修正を行っています。また、敬称は省略させていただいています。
「SDGsティーチャー」は、TOKYOFMで2021年10月まで放送されたラジオ番組です。
AuDeeやRadikoのようなラジオアプリからも、過去の放送をご視聴いただけます。https://audee.jp/program/show/51837