ゲスト:経済産業省 産業資金課長 呉村益生さん
パーソナリティ:弊社代表理事 青柳仁士 / フリーアナウンサー 魚住りえ

1.オープニング・トーク

(青柳)

いつものSDGsティーチャーは、民間企業におけるトップランナーをゲストにお招きし、その先進的な活動を紹介していただくことで企業がビジネスを通してSDGsに取り組むきっかけとなったり、個人がそういう企業を応援したい、という流れを生むような目的でお送りしているのですが、今回は角度を変えまして、日本政府や国連がSDGsをどう捉えてるのか、そこで働いている人はどういう思いで働いているのかを聞いてみたいと思います。

(魚住)

初めての試みですね。とても楽しみです。

2.サステナフォーカス

(青柳)

本日のゲストは、経済産業省 産業資金課長 呉村益生さんです。本日はよろしくお願いいたします。

(魚住)

いつものサステナフォーカスでは民間で活動される様々なSDGsの取り組みを伺ってきましたが、今日は行政の立場からのSDGsについて聞いていきたいと思います。

(青柳)

日本政府のSDGsの取り組みとしては、SDGs推進本部を内閣総理大臣を議長として立ち上げ、半年に1回の会議とともに『Japan SDGs アワード』において過去に来ていただいた日本フードエコロジーセンターさんや大川印刷さんなどの優秀な企業を表彰したりしています。その他にも基本的な方針や政策、アクションプランを筆頭となって作成しています。経済産業省として、SDGsはどのような視点で取り組んでいらっしゃるのでしょうか。

(呉村)

日本政府しては3つの柱としてSDGsを推進しています。それは、以下の3つです。

  1. ビジネスとイノベーション
  2. 地方創生
  3. 女性や若手の活躍、エンパワーメント

経済産業省はこの中でも、1.ビジネスとイノベーションからSDGsを進めていくという政策を立ち上げています。日本の企業は多くの素晴らしい技術やビジネスモデルを持っていますので、それを通じて世界中の課題を解決していくための手助けをするのが経済産業省の仕事だと思っています。

(青柳)

呉村さんのお仕事としては、どのようなことをされているのでしょうか。

(呉村)

はい、私の所属する産業資金課は、大きな視点で言いますと日本中のお金や世界中のお金が新しいビジネスや産業に流れていくことによって企業が挑戦する機会をサポートしています。企業が長期でイノベーションに投資し、株主がそれを後押しするようなビジネス構築や投資のサポートを行っています。

(魚住)

そのためには株主の方の考え方を変える試みも行っているのですか?

(呉村)

そうですね。例えば日本政府が打ち出した2050年までにカーボンニュートラルにするという政策を実現するために、水素の技術が注目されてます。これには長期的な研究開発や多くの企業が協力しての技術開発が行われるわけですが、社会にとって良い技術であればマーケットは広がっていき、結果的に株主にとっても悪い話ではないわけですよね。そのように長期の時間軸で見た際に、企業にとって、株主にとって、そして社会にとっても良い『Win-Win-Win』を実現するための情報開示や株主との対話を促しています。

(青柳)

素晴らしいですね。今まで来ていただいたゲストのような民間企業の方々がまさに待ち望んでいた政策と言えますね。

経済産業省は、SDGsに取り組もうとしている企業に対して、どのようなアドバイスをしているのでしょうか。

(呉村)

経済産業省として2019年、「SDGs経営ガイド」を発表しました。これはSDGsに取り組んでいる企業様や機関投資家、UNDPを招き、SGDs経営をする際にどういう観点で取り組めばいいのかということを紹介しています。ポイントとしては6つの視点がありまして、例えば1つ目は『稼ぐ力と課題解決を両立しましょう』というものです。もう一つは『重要課題(マテリアリティ)の確定』です。どの分野で注力していくかを決めることで、自分たちの持つビジネスモデルを技術を使っていくことが重要であるというものです。

(青柳)

実践的な内容になっていて、企業としても『そこが知りたかった』という内容が多いのではないかと思います。こちらインターネット上で無料公開されていますので、ぜひ見てみるといいですね。

(魚住)

新型コロナウイルスの影響で、多くの企業は『持続不可能』な状況に陥ってしまっていると思います。この状況についてどのように捉えていらっしゃいますか?

(呉村)

政府としては資金繰り対策ということで様々な取り組みを行っています。一方で、ポストコロナに対してのアンケートを行ったところ、64%の人々はこの状況を乗り越えることで、生活や環境を見直すきっかけとしてイノベーションを生み出していきたいと答えました。また企業にも同様のアンケートを行ったところ、一番見直したい経営戦略は『持続可能性』であり、長期的なビジョンで事業を行うための後押しをしようとしています。
これを『SX(Sustainability Transformation)』と呼び、企業が長期的な視点で課題解決していくことを後押ししていきます。

(青柳)

『SX』が色んな企業で浸透していくといいですね。国連側から日本に対して期待していることはあるのでしょうか。

(呉村)

昨年国連と共同でイベントを行った際に、まさに日本の持っている技術力・イノベーションは世界中の課題解決をする力を秘めているので、ぜひ今後も協力してほしいといわれました。また国連自体も、今までのような非営利団体を中心とした課題解決ではなく、民間企業のイノベーション力をもっと取り入れていくことによって解決するよう変わったといっていました。新しい分野にお金が流れる仕組みを、国連を含め世界中の人たちと協力して構築していきたいと思っています。

(青柳)

最後に、呉村さんが描く『持続可能な社会』の展望についてお聞かせください。

(呉村)

企業が持っている力をもっと発展させよう、成長させようという力を促していくことが重要だと思っています。そういう点でも、社会課題の解決をビジネスを通じて行うということを循環させることで企業にも良い、社会にも良いサイクルができることで、日本が成長していくと思いますし、世界の課題も解決されていくという流ればできればいいなと思っています。

3.クロージング・トーク

(魚住)

本日お越しいただいた呉村さんのお話を聞いて、いかがだったでしょうか。

(青柳)

強烈な追い風、という印象でした。持続可能な社会を作るために日本政府、国連だけではなく、民間企業や投資家も動いていて、SDGsは自分とは遠い存在ではなく、まさに身近に感じるものでしたね。UNDPの総裁は私の昔の上司でして、世界に変化を起こしたいということを常々言っている方です。そういう方が国連の仕組みを変え、民間企業の力を活かした動きをもたらしているのだろうと感じました。

公共セクターもSDGsの実現に向けて動いているよ、ということがよくわかる内容だったのではないかと思います。


注:本記事は放送内容の完全な書き起こしではなく、必要に応じて要約や加筆・修正を行っています。また、敬称は省略させていただいています。

「SDGsティーチャー」は、TOKYOFMで2021年10月まで放送されたラジオ番組です。
同番組では、サステナビリティを実現し社会課題を解決するための活動を行っている団体 や企業からゲストをお招きし、そのきっかけや今後の目標についてお聞きしました。

AuDeeのラジオアプリからも、過去の放送をご視聴いただけます。https://audee.jp/program/show/51837