ゲスト:TOTO株式会社 経営企画本部 ESG推進部 青野 拓さん
パーソナリティ:弊社代表理事 青柳仁士 / フリーアナウンサー 魚住りえ
1.オープニング・トーク
(青柳)
日本にいるとSDGsの目標の中でも基本的に達成されていて、あまり意識しないゴールがあります。それは『6.安全な水とトイレを世界中に』です。
私がアフガニスタンに駐在していた頃、レストランでトイレに行こうと思い案内されたのが、野外の森でした。そこには溝が掘ってあり、そこでトイレをしろ、というのです。日本人からしたら考えられないと思いますが、実は世界の約6億人の人が未だに野外排泄をしています。これは途上国の農村の7割にあたります。これの何が問題かというと、野外排泄により感染症がまん延してしまったり、流れ出すことによる環境汚染の拡大につながっているということです。これを解決することはとても重要になっています。
(魚住)
私も日本テレビのアナウンサー時代に、海外で過酷なロケをしたことがあるのですが、カンボジアの農村などではやはり野外でした。非常に衝撃を受けましたね。
(青柳)
そういう場所が未だにあるんだということを日本人は忘れがちですが、現在の日本のような衛生的なトイレに貢献した企業の方を本日はゲストにお呼びし、世界のトイレ事情に関してSDGsの一つのゴールとして考えていきたいと思います。
2.サステナフォーカス
(青柳)
本日のゲストは、TOTO株式会社 経営企画本部 ESG推進部の青野 拓さんです。本日はよろしくお願いいたします。
(魚住)
TOTOは、1917年に創立され、トイレや洗面器などの衛生陶器の分野において国内トップレベルのシェアを誇る企業です。日本国内だけではなく、世界18の国と地域で事業を展開しています。創業から100年以上の歴史を持ち、初めて腰掛け式水洗便器の本格的な国産化を実現した企業でもあります。
(青柳)
TOTOの企業の成り立ち自体が、SDGsのゴール6と非常に関係が深いと思うのですが、まずは創立のきっかけを教えていただけますか。
(青野)
初代の社長が欧米に出張に行った際に、その進歩的なトイレや生活に感動し、当時日本ではまだ下水道が普及していなかったのですが、この健康で文化的な生活を日本人にも提供したいと思ったのがきっかけとなり創業しています。
(青柳)
今や日本のトイレは世界一、と言われるほどですが、そのような品質まで高められてきた立役者がTOTOさんだと思います。創業時の考え方は現在にも受け継がれているのでしょうか。
(青野)
そうですね。初代の社長が二代目の社長に送った手紙の中に、今後大切にしてもらいたいことである商品の品質と、お客様に寄り添う姿勢に関して記載がありまして、それは現在経営理念の一つである『水回りを中心とした豊かで快適な生活に寄与します』として現在にも引き継がれています。
(青柳)
SDGsのゴール6に関して、トイレはTOTOさんと関連が深いというのはすぐにわかるのですが、限りある資源である『水』に関して、企業としてどのような取り組みをしているのでしょうか。
(青野)
ある調査によると、日本人の水の使用量は世界の平均の2倍近い、と言われています。日本の家庭で一番多く水を使うのが風呂とトイレで、この2つが全体の6割を占めるということで、風呂とトイレの節水が重要だと考えています。これは高度成長期に起こった水不足などの時代から、トイレの節水化などの開発を進めています。当時1回のトイレで約20ℓの水を使っていたのですが、研究開発を重ね、現在最新のものは約6.8ℓまで使用する水の量を減らすことができています。
(青柳)
現在、まさに100年に1度といわれる新型コロナウイルスのまん延する時代が訪れていますが、このような時代の中で、どのような自社の活動を行うのか、SDGsにどう貢献できるかを考えているか教えていただけますか。
(青野)
清潔性という分野に非常に関心が高まっている中で、TOTOにできることはたくさんあると思っています。例えば非接触のトイレや洗面所もそうですが、我々の技術で『きれい除菌水』というものがあります。これは、水道水に含まれている物質を電気分解して作られる除菌水なのですが、これは薬品や洗剤を使わずに除菌ができる上に時間が経つと水に戻るということで、非常に環境負荷の低い新技術です。このような技術をより幅広い分野に提供していくことがひとつの答えなのではと考えています。
(青柳)
これから先の、TOTOが掲げている『持続可能な社会』への目標やビジョンについてお聞かせください。
(青野)
創業当時から大切にしている『健康的で文化的な暮らし』についてこれまで以上に取り組んでいく必要があると思います。主に、TOTOのミッションの3つである「1.きれいと快適」「2.環境」「3.人とのつながり」この3つのテーマに深く取り組んでいくことで、SGDsにも貢献できるのではないかと考えています。
3.クロージング・トーク
(魚住)
本日お越しいただいた青野さんのお話を聞いて、いかがだったでしょうか。
(青柳)
トイレの問題を日本人の多くの人があまり考えない背景として、多くの人や企業が努力や貢献をしてきたからなんだということが非常に印象的でした。TOTOは企業理念に沿って衛生的なトイレ事情を改善してきたというのがとても重要で、SDGsにおいても我々が思考停止しがちな、どれくらいの水が使われているのか、衛生的なトイレが感染症防止にどれだけ寄与しているのかなど、もう一歩踏み込んだ考え方を私たち一般消費者に事業を通して提供してくれています。我々もそのような企業努力に改めて思いを向けることが大切だと感じました。
注:本記事は放送内容の完全な書き起こしではなく、必要に応じて要約や加筆・修正を行っています。また、敬称は省略させていただいています。
「SDGsティーチャー」は、TOKYOFMで2021年10月まで放送されたラジオ番組です。
同番組では、サステナビリティを実現し社会課題を解決するための活動を行っている団体 や企業からゲストをお招きし、そのきっかけや今後の目標についてお聞きしました。
AuDeeのラジオアプリからも、過去の放送をご視聴いただけます。https://audee.jp/program/show/51837