ゲスト:アートコーポレーション 経営企画部 舛田 典朗さん
パーソナリティ:弊社代表理事 青柳仁士 / フリーアナウンサー 魚住りえ

1.オープニング・トーク

(青柳)

もう2月ということで、新生活に向けて引っ越しをする人や家庭が増える時期です。私は学生の頃屋引っ越し屋でアルバイトをしていたことがあるのですが、一番の繁忙期は3月でした。SDGsへの取り組みという視点で見たとき、たくさんの人が動くときに発生するごみや、移動のためのガソリンの使用など、個人として行うことは難しいですが、引っ越しを行う企業が取り組めば大きなインパクトとなります。今日はそんな引っ越しをテーマに、ゲストからお話を伺いたいと思います。

(魚住)

引っ越しとSDGsがどのようにつながるのか、とても楽しみですね。

2.サステナフォーカス

(青柳)

本日のゲストは、アートコーポレーション 経営企画部の舛田 典朗さんです。本日はよろしくお願いいたします。

(魚住)

大阪市に本社を置くアートコーポレーションは、1976年に引っ越しを専業として創業し、アート引越センターを運営しています。アート引越センターは、引っ越しを『運送業』ではなく『サービス業』として発展させてきました。今日は、引っ越しをサービス業として発展させながら、どのようにSDGsの視点を取り入れてきたのかを伺いたいと思います。

(青柳)

今がまさに繁忙期だと思うのですが、SDGsの17の目標のなかで、引っ越しを担う企業としてどのような取り組みを行っているのでしょうか。

(舛田)

まずは地球温暖化、資源の枯渇などの問題を改善・解決するためにごみゼロの引っ越しを目指しています。従来であれば梱包の際に様々な緩衝材を使用しなければいけないのですが、そのような資材を減らすために当社は独自で『エコ楽ボックス』を開発しました。箱の中に間仕切りがあって、様々な種類の食器を入れられ、お子様でも簡単に梱包作業ができる仕組みになっています。食器のほかにも、洋服をハンガーにかけたまま運べるものや、照明器具用のボックス、靴用のボックスなどがあります。

(魚住)

ありがたいですね。引っ越しをしたときに使う段ボールや紙、プチプチはなるべく再利用するようにしていましたが、やはり大変な量になりますよね。

(青柳)

今までは新しい段ボールをお客様に渡して梱包してもらい、引っ越し後の処分はお客様にお願いするということでした。アートコーポレーションでも無料の段ボール回収を行っていたようですが、その多くはごみになってしまっていたのが現実です。一回の引っ越しでどのくらいの量がでるのでしょうか。

(舛田)

引っ越しされる方によってもちろん違うのですが、単身者の方で段ボール20箱、ご家族となると100箱ほど使っていただくことが多いです。この問題に対し、エコ楽ボックスの導入により、緩衝材の使用料は、当社比で22%削減できています。これは一年間で東京ドーム48個分の総面積にあたります。

(青柳)

それはすごい量ですね!これはアートコーポレーション一社だけでこの数字なのですから、そのほかの引っ越し業者が一丸となって行えばもっとすごい量になりますね。逆に言うと、現在もそれだけのごみが引っ越しによって出てしまっている可能性があるということですよね。

新しい梱包用のボックスを開発したことによって、環境への好影響はもちろんですが、企業にとってなにかメリットはあったのでしょうか。

(舛田)

総合的にみるとコストの削減につながっているのと、このボックスは無料で貸し出しを行っているため、お客様にとっても資材購入のコストを減らすことができ、お互いにとってメリットになっています。

(青柳)

企業、顧客、社会にとってコストだった梱包材というものをアイデア一つで削減し、かつお客様との間の共通理解によって成立するということは、SDGsに取り組むビジネスに共通することだと思います。

(舛田)

またコロナ禍において、マスクを着けたまま作業するスタッフの熱中症の危険を防ぎ、快適に作業するためにマスクの中に装着するフレームを開発いたしました。これを自社HPで販売を行ったところ、多方面から多くの反響をいただきました。

さらに、引っ越し業界では珍しい『定休日』を設けることで、従業員の満足度を上げ、お客様により良いサービスを提供できるように働き方改革を行いました。しっかりした管理体制を設けることで、離職の防止にもつながっています。

(青柳)

SDGsのゴールの中にディーセントワークと呼ばれる働き方に関する目標があります。働き方自体が従業員にとって満足いくものにするために企業として取り組むというのは、とても重要なことだと思います。

これからアートコーポレーションとしてSDGsのための取り組みに対し、どのようなビジョンを描いていますか。

(舛田)

創業以来、お客様の『あったらいいな』を形にするためさまざまなサービスを生み出してきました。この視点を大切に取り組むことが、自然とSDGsの実現につながると思っているので、これからも『あったらいいな』を大切に事業に取り組んでいきます。

3.クロージング・トーク

(魚住)

本日お越しいただいた舛田さんのお話を聞いて、いかがだったでしょうか。

(青柳)

梱包材の開発により相当量の梱包材を削減できる、これを今後ほかの引っ越し業界の企業と取り組んでいけば大きなインパクトになります。また同社が掲げる『引っ越しでのごみゼロ』という明確な目標のために企業努力を続けす姿勢は、今後他の業界にも広がっていくといいなと思います。


注:本記事は放送内容の完全な書き起こしではなく、必要に応じて要約や加筆・修正を行っています。また、敬称は省略させていただいています。

「SDGsティーチャー」は、TOKYOFMで2021年10月まで放送されたラジオ番組です。
同番組では、サステナビリティを実現し社会課題を解決するための活動を行っている団体 や企業からゲストをお招きし、そのきっかけや今後の目標についてお聞きしました。

AuDeeのラジオアプリからも、過去の放送をご視聴いただけます。https://audee.jp/program/show/51837