ゲスト:神奈川県川崎市長 福田紀彦さん
パーソナリティ:弊社代表理事 青柳仁士 / フリーアナウンサー 魚住りえ

1.オープニング・トーク

(魚住)

SDGsというとまず脱炭素が思い浮かびますが、最近だと水素で走る公共バスなどを見かけますね。

(青柳)

世界的には脱炭素社会を目指すためにガソリン車から電気自動車へのシフトが主流になってきていますが、日本の特徴は、それと並行して水素を使おうとしているところです。しかし水素ステーションを一か所設置するのに2億円程度かかるということで、企業だけではなかなか進みづらいですね。本日は地方自治体のなかでもトップランナーと呼べる方に来ていただいていますので、お話を伺っていきたいと思います。

2.サステナフォーカス

(青柳)

本日のゲストは、神奈川県川崎市長、福田紀彦さんです。本日はよろしくお願いいたします。

(魚住)

川崎市は、様々な課題を市民・事業者などと解決してきた歴史と、持続可能な社会への取り組みが評価され、2019年7月に国からSDGs未来都市に選定されました。「成長と成熟の調和による持続可能な最”幸”なまち、川崎」を2030年のスローガンに掲げています。

(青柳)

様々な課題に向き合ってきた歴史、とありましたが、具体的にはどのようなものだったのでしょうか。

(福田)

川崎のイメージは工業都市、だと思いますが、実際に公害と闘ってきた歴史があります。一時期泡が浮いていた多摩川には現在アユが遡上し、また30年前にはごみ非常事態宣言を出すほどのごみを排出していましたが、最近の調査では、政令指定都市で一番ごみの少ない都市となりました。ひとつひとつの環境問題を市民や事業者と解決してきた素地があります。

(青柳)

SDGs未来都市に選定され、そういった流れの中で川崎市として一番力を入れていることは何ですか。

(福田)

昨年2月に川崎市が脱炭素宣言を行い、11月には川崎カーボンゼロチャレンジ2050を設定し実施を始めました。同市の特徴として、排出されるCO2の78%は産業系なので、事業所の協力なくして達成はできません。市民の協力はもちろん、様々な企業を巻き込んで行っていくのが川崎市の特徴でもあります。

(青柳)

脱炭素に向けて具体的な数値を設定し、市民と民間企業と共にそれを目指す取り組みをしている中で、今後水素の利用が大きな役割を果たすかと思うのですが、川崎市としてどのような取り組みを行っているのでしょうか。

(福田)

水素は最近の技術のように思われがちですが、川崎では、実は日常的に昔から臨海部の工業地帯で石油精製において大量の水素が使われており、異業種同業種で水素がパイプラインでつながれています。その川崎特有の水素社会をどのように発展させていくかなので、比較的着手しやすい分野だと思います。どのように安い水素を供給していくかがポイントになります。

(青柳)

これまで様々なお話を伺った中で、これからより多くの市民を巻き込んでいくことが重要になってくるかと思うのですが、現状どのような働きかけをしているのでしょうか。

(福田)

先日川崎市でSDGsのパートナー制度を制定しました。認定されると、事業者であれば融資の際に金利が優遇されるなど、メリットがわかりやすく取り組みやすいプラットフォームを構築中です。事業者だけではなくNPOや学校など、様々な組織が参加できるのも特徴です。様々な主体が結びつきながらSDGsに関わる活動を行うことによって、その波及効果を広めることもこのプラットフォームの目的となっています。

現在面白い取り組みとして、川崎市内のマクドナルドがお店から出る排プラスチックから作った水素をトヨタのミライに充填させ、またマクドナルドの配達のバイクにその燃料を積んで走らせるといった完全循環を成功させています。このような見えやすい活動で市民への認知も上がっています。

(青柳)

様々な取り組みを行っている川崎市ですが、川崎市のあるべき未来に関して、市長としてどのようなビジョンを描いていますか。

(福田)

SDGsそのものではありますが、この街が持続可能であるかどうかというのが行政としての最大の役割だと考えています。そのためにはエネルギーを変え、市民の行動や意識を変えてきかなければいけません。今まで縦割りだった役割をSDGsのフィルターを通してみると、別のつながりや関わり方が見えてきます。このように連携を深めていくと持続可能な街ができると思っているので、今後もスパイラルアップしていきたいと考えています。

3.クロージング・トーク

(青柳)

皆さんも川崎市を訪れて、水素社会への取り組みを体感してみてください。


注:本記事は放送内容の完全な書き起こしではなく、必要に応じて要約や加筆・修正を行っています。また、敬称は省略させていただいています。

「SDGsティーチャー」は、TOKYOFMで2021年10月まで放送されたラジオ番組です。
同番組では、サステナビリティを実現し社会課題を解決するための活動を行っている団体 や企業からゲストをお招きし、そのきっかけや今後の目標についてお聞きしました。

AuDeeのラジオアプリからも、過去の放送をご視聴いただけます。https://audee.jp/program/show/51837