DAY25で見てきたように、企業はESG対応を先に行い、後付けでSDGsを紐づけようとすると、見せかけのSDGsへの取り組み(SDGsウォッシュ)になってしまいがちです。しかし、実際には既に始めてしまったESG対応の方法を後から抜本的に変えるのは容易ではありません。ESG対応を先に行い、それをベースにすることは変えずに、本質的なSDGsの取り組みを行うにはどうしたらよいでしょうか。それは、サステナビリティへの取り組みをサイクルとしてとらえ、ESGとSDGsをその中で起点の違う一部分と位置付けることです。
そもそもなぜESGとSDGsを紐づけると失敗するのか?
SDGsウォッシュを意図的に行おうと考えるような悪質な意図を持った企業でない限り、SDGsを見た目だけの取り組みにしてしまおうなどとは誰も考えません。ほとんどの企業はSDGsに取り組むことで自社の利益や成長に繋げたいと思っていますが、同時に、人々や社会により必要とされたいという思いも抱えています。にもかかわらず、ESGでは優良事例と言われる企業の多くがSDGsウォッシュに陥ってしてしまうのは、なぜなのでしょうか。
その答えは、ESGへの取り組みとはそもそも「評価」の視点を前提としていることにあります。ESGは企業を評価し、その結果を投資家の投資判断に組み込むことが目的です。サステナビリティに取り組む一連のプロセスを、「計画」、「実行」、「評価」という3段階で考えると、ESGの起点は最後の部分にあたります。まず自社のサステナビリティ面の実力が評価され、そこから伸ばすべき点や対処すべき点などの改善点が明らかになり、次の評価に向かって計画し、実行されます。つまり、基本的に計画と実行は評価を高めるためのものという位置づけです。
一方で、SDGsは持続不可能な世界を持続可能にするための企業の行動です。持続可能な世界の実現に向けた企業の行動変容やイノベーションに最大の重点を置くSDGsの起点は「計画」にあります。この点は、評価を起点とするESGとは明確に異なります。この違いのため、ESGの視点でSDGsを扱おうとすると、SDGsは「良い評価を得るためのもの」となり、そもそものSDGsの趣旨とはかけ離れた理解と取り組みになってしまうのです。
どうすればよいのか?
この問題に対する解決策は、サステナビリティへの取り組みは一度で実行して終わりの線的なプロセスではなく、何週もして改善し続けていく円的なプロセス(サイクル)だと考えることす。
ビジネスパーソンにとってなじみの深いPDCAのサイクルでとらえると分かり易いと思います。以下の図のように見てみると、線的なプロセスでは「See(評価)」で終わるところが、「Check & Action(評価・改善)」となって次のサイクルへ続いていきます。このプロセスは一周して終わりではなく、何周もしながら改善が続いていきます。
何周も回っていく成長サイクルと捉えれば、ESGとSDGsの起点の違いはほとんど意味がなくなり、連続した一つのプロセスに統合することができます。また、何周もすることが前提となっているため、第一週目で形式を整えて終わりという発想を自然に捨てることができます。
こうして、SDGsはESG評価で高評価を得るための計画立案ではなく、将来の持続可能な世界において人々と社会に必要とされ続ける存在意義の高い企業を目指し、自社の経営の理念や方針を強化するための計画立案という本来の役割を果たすことができるようになります。
何を目指すべきか?
ESGの取り組みは、株式市場での投資家からの評価、つまり外部評価を高めることが目的になりがちです。 しかし、目的が外部評価の向上になってしまうと、サステナビリティの取り組みは単なる企業のイメージアップ活動になってしまい、社会にも自社にも実質的な変化が起きません。そうではなく、SDGsの視点を持ち、次に訪れる持続可能な世界において、長期的に人々と社会から必要とされ続ける存在意義の高い企業になることが重要です。世界にとって存在意義の高い会社は、長い目で見れば外部評価も後から追いついてきます。