DAY25で見てきたように、ESGからSDGsを紐づけようとすると、SDGsが形骸化しまうという問題が発生します。しかし、ESG投資やサステナビリティ報告の方法論の標準化が進んでいる状況下、企業としてSDGs導入・実践のやり方自体を大きく変えることは困難です。ESGの方法論をベースにすることは変えずに、SDGsの形骸化という問題に対処するには、どうしたら良いのでしょうか。

それは、企業におけるSDGsの実施者である社員の価値観や行動様式を変えることです。同じ取り組み方でも、視点や考え方を変えると結果が大きく異なってきます。本質的なSDGsを実践するための具体的な視点や考え方とは、1)サイクルとして見る、2)アウトサイドインで考える、3)共通価値を創出する、の3つです。それらをDAY26、27、28で順に解説していきます。

なぜESGとSDGsを紐づけると形式化してしまうのか?

SDGsウォッシュを意図的に行おうと考えるような悪質な意図を持った企業でない限り、SDGsを見た目だけの取り組みにしてしまおうなどとは誰も考えません。多くの企業はSDGsに取り組むことで自社の利益や成長に繋げたいと思っていますが、同時に、人々や社会により必要とされたいという思いも抱えています。にもかかわらず、多くの企業においてESGからの紐づけを行うとSDGsが形骸化してしまうのは、なぜなのでしょうか。

これは、ESGへの取り組みとはそもそも「評価」の視点を前提としているからです。ESGは企業を評価し、その結果を投資家の投資判断に組み込むことが目的です。SDGsに取り組む一連のプロセスを、「目標を立てる」、「実行する」、「評価する」という3段階で考えると、ESGは最後の部分にあたります。目標を立てて実行するのは、あくまで評価を高めるため、あるいは評価の結果改善点が明らかになったからであり、起点は評価にあります。

しかし、SDGsは持続不可能な世界を持続可能にするための企業の行動ですので、評価ではなく目標を立てることや実行にこそ価値があります。SDGsの起点は目標を立てて実行することにあり、評価を起点とするESGとは異なるのです。そのため、ESGの視点でSDGsを扱おうとすると、「良い評価を得るためにSDGsの目標を立て、実行する」という発想になってしまいます。これでは、SDGsは「良い評価を得るための目標立ての一部」に過ぎず、その本質とはかけ離れた理解と取り組みになります。

どうすればよいのか?

この問題に対する解決策は、サステナビリティへの取り組みは一度で実行して終わりになる線的なプロセスではなく、何週もして改善し続けていく円的なプロセス(サイクル)だと考えることす。

ビジネスパーソンにとってなじみの深いPDCAのサイクルでとらえると分かり易いと思います。DAY18でも解説したとおり、以下の図のように見てみると、ESGとSDGsは企業価値を高めるためのサステナビリティの取り組みの一部であり、起点が異なっていることが分かります。線的なプロセスでは「See(評価)」で終わるところが、「Check & Action(評価・改善)」となって次のサイクルへ続いていきます。このプロセスは一周して終わりではなく、何周もしながら改善が続いていきます。

このように考えることで、SDGsはESG評価で高評価を得るための目標立てではなく、自社の経営理念・方針・計画を考える本来の目標を立てるプロセスで検討することができます。そして、何周もすることが前提となっているため、第一週目で形式を整えて終わりという発想を自然に捨てることができ、SDGsの取り組みは本質的なものになっていきます。