入り口をできるだけ低くする

 その後様々な取り組みを矢継ぎ早に実施した。中でも、「さがみはらSDGsパートナー制度」には596の地域の企業・団体(2022年5月時点)が参加している。同制度は、相模原市とSDGsの達成に向けた取組や地域課題の解決、SDGsの普及啓発に取り組む企業・団体等を「さがみはらSDGsパートナー」として登録する制度だ。これだけ多くの組織の参加を得られたポイントとして榎本さんはできるだけ参加のハードルを下げて多くの人に参加をしてもらうことを意識したという。

参加のインセンティブを設ける

 パートナーになると地元の「さがみはら津久井産材」で作られた立派な木の楯を市長が直接手渡し写真を撮る、という仕掛けも用意している。市長のスケジュール調整などで大変なこともあるというが、特にSDGsの認知度が広がっていなかった当初は楯と写真を使って企業や市民の方がSDGsの発信者になって欲しいという想いもあって、「そこは力を入れてやっています」という。

パートナー登録式では津久井産材でできた楯を市長自ら贈呈する

 素材に津久井産材を用いているのは、災害防止と将来の輸入木材の減少に備え、地元の木を使うという意識を高めたいという思いからだ。災害防止の考えは、2019年に各地で大きな被害をもたらした東日本台風がきっかけとなった。同台風により相模原市でも増水や崖崩れなどが多発し8人が亡くなった。その一因は市内の森林の整備不足だった。間伐不足により陽光が入らなくなり、木の根が張りにくくなり、下草が消失することで表土の流出、土砂災害が起きやすくなっていたのである。

間伐があまり行われていない理由は木を切っても売れない為と聞いた榎本さんは「切った木が流通していく経路があれば間伐が進むんじゃないか」と考え、そのために、まず地元の津久井産材をPRしようと森林政策課という別の部署とも調整をして津久井産材で楯を作るというアイディアを形にしたという。榎本さんは言う。

「地産地消というと食べ物のイメージがあって、地元の木を使うという意識はあまりありません。しかし、今後10年、20年先も新興国の需要も高まるとともに、いろいろな国で森林管理に対する意識も高まっている中で海外から安価な木材が入り続けるということもないと思います。そう考えると国内でいかに循環させていくかが重要となるなかで、今から国内の森林を整備していくことが必要だと考えています。」

相模原市の中間山地

他部署・組織との連携

 上記のような他部署との連携についても、SDGsがあることで連携がし易くなったという。SDGsは領域が広く、自分たちができることには限界があるので、他部署やパートナーとの連携は欠かせないがSDGsがすごくいいきっかけになっているという。「SDGsがなかったら今やっているような連携はできなかったと思います。SDGsという大きな枠組みがあり、同じ方向を向いていることから、受けてくれる部署が増えました」と榎本さんは言う。

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