ゲスト:サラヤ株式会社 コミュニケーション本部長 代島裕世さん
パーソナリティ:弊社代表理事 青柳仁士 / フリーアナウンサー 魚住りえ

1.オープニング・トーク

(魚住)

4月に入り新生活が始まった方が多いと思いますが、この一年で手を洗うという習慣ができたのではないかと思います。

(青柳)

コロナの影響ですね。ちなみに今年のインフルエンザの感染者数は世界的にみても限りなくゼロに近いんです。手洗いとマスクの効果でもあるのですが、個人の感染予防の行動が、社会全体の健康と福祉に貢献できるということなんですね。このように個人でできることが社会全体の利益につながることを考えてみるといいと思います。

2.サステナフォーカス

(青柳)

本日のゲストは、サラヤ株式会社 コミュニケーション本部長の代島裕世さんです。本日はよろしくお願いいたします。

(魚住)

サラヤは、1952年戦後の衛生状態のよくない日本で、手洗いと同時に殺菌・消毒ができるシャボネットせっけん液を開発し誕生しました。以来、半世紀以上にわたり感染予防の医薬品メーカーとして社会的課題に向き合い、環境・衛生・健康を事業ビジョンに掲げ、いち早くSDGs経営を実施してきたことが評価され、2017年には第一回ジャパンSDGsアワードを受賞しています。

(青柳)

感染予防の医薬品メーカーとして創業されたサラヤですが、現在の看板商品はヤシの実洗剤ということで、こちらどのようなきっかけでこの商品を開発されたのでしょうか。

(代島)

サラヤは戦後の日本を手洗いで復興するという思いで立ち上がった会社です。手洗いせっけん液を普及していますと、食品衛生の現場からの洗剤へのニーズが生まれ、1960年代から開発をしていたのですが、当時は石油系洗剤による河川の汚染や肌荒れが問題となっていました。もともとシャボネットせっけん液は植物由来でヤシ油をつかっており、分解も早く、肌にも優しいため、これを応用し1971年にヤシの実洗剤が誕生いたしました。

(青柳)

河川を汚さないエコな植物由来の洗剤の開発を進められたのですが、その一方で、ある時期に環境問題の矢面に立たされた時期があると伺いました。

(代島)

21世紀になり、ヤシの実洗剤が東南アジアの熱帯雨林破壊の一因になっているとマスメディアによって報道されました。調査を進めると、洗剤に必要な原料であるラウリン酸が、生産地でもともとのココヤシから油やし(パーム油)に変更され産出されていたことがわかりました。成分は同じでも、違う原料から生成されていたのです。そこにサラヤが気づけなかったのです。

(青柳)

SDGへの対応を考えている企業は、このサプライチェーンを見直すという取り組みがとても重要なので知っていただきたいです。商品の製造のために必要な原料・材料は果たしてどこから来ているのか、もし取引先がきちんとしていないのであれば取引先を切り替えるところまで考えないとSDGsに貢献しているとは言えません。

パーム油は万能な原料として食品業界ではとても重宝されています。何が問題かというと、このパーム油を安定生産するために熱帯雨林が切り開かれ、パーム油のプランテーションが東南アジアで作られています。現地の農家の人々は貧しいため、現金収入や生活のためにパーム油のプランテーションを行います。これにより貴重な生態系や熱帯雨林の破壊が進んでいるということが世界的に大きな社会問題となっているのです。

(魚住)

今までエコだった商品に対してと逆風が吹いてしまったわけですが、どのようにして再びサラヤの商品が支持されるようになったのでしょうか。

(代島)

買い手がきちんとパーム油を作っている生産者に対しインセンティブをつけて購入するという取り組み(持続可能なパーム油のための円卓会議:RSPO)に2005年に日本から初めて参加し、現在まで参加し続け、RSPO認証を取得しています。これだけではなく、さらに本格的に生態系を守るためのプラットフォームとしてボルネオ保全トラストという新しい団体の立ち上げに参加しました。これがサラヤがユニークだといわれるきっかけとなりました。

このトラスト運営資金として、2007年からサラヤの対象商品の売り上げの1%をこのトラストに寄付するというスキームを作り、パーム油を排除するのではなく持続可能なパーム油生産という方向性を示したことで消費者からの支持を少しずつ回復するようになりました。

また2012年から「ハッピーエレファント」ブランドを立ち上げました。これはさらに上をいく21世紀のエコ洗剤を目指していて、パッケージには象と生物多様性を示すイラストが描かれています。これは陸上で一番大きい哺乳類である象が生きていけるなら人間も生きていけるはずというコンセプトのもと、共生のメッセージを込めており、原料がどこの農園から来たものか物理的にさかのぼれる商品となっています。

3.クロージング・トーク

(青柳)

パン、チョコレート、化粧品…皆さんの周りでもパーム油はたくさん使われています。ぜひ「植物油脂」という表示を色々な商品の中でチェックしてみてください。


注:本記事は放送内容の完全な書き起こしではなく、必要に応じて要約や加筆・修正を行っています。また、敬称は省略させていただいています。

「SDGsティーチャー」は、TOKYOFMで2021年10月まで放送されたラジオ番組です。
同番組では、サステナビリティを実現し社会課題を解決するための活動を行っている団体 や企業からゲストをお招きし、そのきっかけや今後の目標についてお聞きしました。

AuDeeのラジオアプリからも、過去の放送をご視聴いただけます。https://audee.jp/program/show/51837