吉野:今後、自治体ごとのニーズにこたえながら、デジタル化を進めていくには、まずどんなところから手を付けていけばよいとお考えですか?
小暮:これまでやってきたことが根付いてしまっていて、デジタル化の第一歩が踏み出せていないところが結構多いような印象を受けています。ただ、コロナ禍によってデジタル化に取り組まなければいけないという機運が高まっています。例えば、皆さんのお仕事をもっと効率的にしていくには、ということを考えていくと電子マネーって結構重要です。いま地域通貨をポツポツやっているところが増えているんですが、コロナ禍で地方の飲食店支援のために地域だけで使えるクーポンを発行したりしています。
魚住:地域振興券みたいなものですね。
小暮:そうです。でもあれは紙なので印刷しないといけないし、もらいに行かないといけないし、更にそれを受け取ったお店は銀行に換金しにいかないといけない。でも忙しいので銀行に行ってる暇はないというような声もありますが、これを電子化している地域が結構増えてきているんですね。QRコードの地域限定版を使うことによって簡単に地域振興券を自分のスマホにチャージして買うことができる。それをお店で利用して、利用してもらったお店の方は全部オンラインで申請するだけでちゃんとお金がもらえるという仕組みです。
魚住:それは便利ですね。
小暮:どのように個人情報を扱うかという問題はありますが、どんな人が使ったかという情報も取れるので、その後のマーケティングにすごく有効だと思うんですよね。例えば東京の世田谷区はせたペイっていうQRコード決済の地域通貨をやっています。これは世田谷区内の飲食店や商店でしか使えないんですけれども、お金をチャージすると、たまに一万円使うと20%戻ってくるなどのキャッシュバックキャンペーンを区の予算でやったりしています。区役所の方も使用動向を見ながら、補助金が余っているからこの辺に投じようというようなこともできて、確実に地域にお金が落ちるようになります。また、せたペイの場合は、使用者を限定していないので、区にやってくる人はどなたでもインストールして使えますので、区民以外もチャージしてくれますが、お金を落とすのは区内のみとなるので、お金が確実に区内に流れる仕組みになっています。このようにデジタル化することでお客さんの情報が集めて、それをマーケティング施策に活かしたり、といろんなことができるようになりますので、使っていただけるとメリットを感じてもらえるようになると思います。
吉野:今後、2030年、さらにはその先に向けて、どんなビジョンを描いていますか?
小暮:2030年のころには空飛ぶ車も実現しているかもしれません。国土交通省とか経済産業省がロードマップを描いていて、2025年にはこういう法律を改正してとかという風に準備は進んでいます。そうなると使う人間の方がもっともっと電子化が進んでいないといけなくなります。例えばスマートフォンで行先を決めたり、いろんな情報を見てコントロールしながら生活するということがもっともっと定着して高度化すると思っています。ですので、空飛ぶ車や電子決済などを着々と進めて、それがあと10年でどれぐらい進むのかなぁと思っているところです。これまで当たり前と思っていたやり方を一回見直してみると情報通信技術を使ってガラッと仕組みを変えられるところが山ほどあるんだろうなとみています。世界の先進事例を参考にしながら、日本で着々と皆さんが便利になるような社会を作っていきたいなと思っています。2030年までに法的な規制など様々な課題を解決するために考え方を変えないといけないところが山ほどあって、そこをどう定着させるかいろいろと悩んでいるところです。
魚住:いろいろな法の規制を取っ払って先に進みたいですね。「サステナフォーカス」今回はSDGsデジタル社会推進機構 小暮祐一さんにお話を伺いました。小暮さん、ありがとうございました。
小暮:ありがとうございました。
注:本記事は放送内容の完全な書き起こしではなく、必要に応じて要約や加筆・修正を行っています。また、敬称は省略させていただいています。
「SDGsティーチャー」は、TOKYOFMで2021年10月まで放送されたラジオ番組です。
同番組では、サステナビリティを実現し社会課題を解決するための活動を行っている団体や企業からゲストをお招きし、そのきっかけや今後の目標についてお聞きしました。
AuDeeのラジオアプリからも、過去の放送をご視聴いただけます。
https://audee.jp/voice/show/35951