吉野:デジタル化というと社会のあらゆる面に関わると思いますが、その中でも特に価値があったとか楽しかった、と感じられたのはどの辺りでしょう?
小暮:地方には行ってみると分かる魅力がたくさんありますが、それがなかなか伝わっていなかったりします。それをどうやって全国の皆さんに知ってもらうかという時に、4,5年前に流行りだした位置情報ゲームを活用した地域振興イベントを青森県の最突端の大間で学生と企てました。普段行けないようなところでゲームを使ったイベントということで、多くの方が関心を持って全国から集まってくれました。そのゲームを実現するために、地域のゲームコミュニティの皆さんはもちろん、隣の岩手県からも全面協力してくれました。そのように地域で地元の人といろんなことをやって、その輪がまた広がっていくというところが地方でいろいろなことをする最大の醍醐味だと思います。ゲームも一つの情報通信技術ですので、一つの成功事例を作れて面白かったなと思っています。
吉野:ゲームを使った地域振興ですね。
小暮:ただ、そうしたイベントだけで終わるのではなく、地域に定着させていきたいと考えています。私の知り合いが長野県の伊那市でやっている最近の取り組みでは、ドローンで物流を始めています。スーパーから町の公民館までドローンを飛ばしてそこから地域のお年寄りのところに物を届けるところまでを毎日定期運航をしています。午前中にスマホで注文すると午後にその商品を持ってきてくれるというサービスです。スマホを持っていないお年寄りも多いんですが、伊那市の場合はケーブルテレビが普及していてほぼ各戸に引き込まれているので、テレビで専門チャンネルを作られて、リモコンから注文できるようにしました。将来はドローンがおうちまで届けてくれるということを実現させたいんですけれども、今はまだ航空法で飛ばせるエリアなどの制限がありますので、公民館まで運んで、そこから各戸までは民生員の方が高齢者の安否確認を兼ねて訪問する仕組みです。こういった事例が各地にポツポツ出てきていますが、それをまずみんなで共有するところから始めたいなと思っています。まだ知られていない取り組みがあると思いますので、それを全国で同じように地域をもっと良くしたいと思っている皆さんに集まって頂いて、各地の成功事例を共有して以降という取り組みを始めたところです。
吉野:地域の振興や地方創生において、各地域で目指しているものとしてはどのようなものがあるのでしょう?
小暮:いろいろな地方を見ていると大体課題は共通ということが分かってきました。まず高齢者の移動手段ですね。高齢者の移動先というのは大体役所か病院ですので、そこをうまく解決してあげるときっと住み易い町になるはずですし、住み易い町を目指すということがこれから一番重要なのかなと思います。そのためにはいろいろな仕組みが必要ですが、例えば、茨城県の境町というところでは、2020年の末ぐらいから実証実験で既に自動運転バスが走っていて、定期運航しています。
魚住:進んでいますね!
小暮:逆に地方の方がそういった実証実験がやり易いんですよね。今の技術では交通量が多い大都市ではそういったバスは走らせられないと思います。でも地方だからこそそういった新たな挑戦ができる土壌もあって、そういった取り組みを共有したり、いろいろな技術やノウハウを持っている東京の会社とマッチングできるような取り組みができるといいなと思っています。