ゲスト:NPO法人クロスフィールズ 西川 理菜さん
パーソナリティ:弊社代表理事 青柳仁士 / フリーアナウンサー 魚住りえ

1.オープニング・トーク

(青柳)

今までSDGsティーチャーで様々なゲストに来ていただきましたが、SDGsには17のゴールがあって、実は取り組みやすかったりイメージしやすいゴールとそうでないゴールがあるんですね。その中でも忘れられがちなのが、17番目の『パートナシップで目標を達成しよう』です。

(魚住)

確かにイメージしにくいですね。具体的に何を私たちがすればいいのでしょうか。

(青柳)

具体的には、先進国から途上国への技術や資金の流れ(政府開発援助)を促進しましょうというのがメインの目標なのですが、特に民間企業で考えたときに具体的なイメージがなかなか湧きにくいです。では民間企業は何をすればいいのでしょうという疑問に答えてくれるゲストに本日お越しいただいています。

2.サステナフォーカス

(青柳)

本日のゲストは、クロスフィールズ 広報・マーケティングチームリーダーの 西川 理菜さんです。本日はよろしくお願いいたします。

(魚住)

2011年に設立されたNPO法人クロスフィールズは、企業で働くとビジネスパーソンと新興国をつなぎ、現地で社会課題解決に取り組む『留職プログラム』や国内外の社会課題の現場を体感する『社会課題体感フィールドスタディー』を手掛けています。

(青柳)

『留学』ではなく『留職』ということで、普段オフィスで働いている社会人をいきなり新興国に送り込むという人材育成プログラムなんですね。とてもすごい試みだと思うのですが、このプログラムについて少しお聞かせいただけますか。

(西川)

『留職』というのは我々が作った造語でして、具体的には社会課題に取り組んでいる途上国のNPO団体や企業に対して、大企業の社員を数カ月派遣し、自身のスキルや経験を活かして課題解決に取り組むというリーダーシップ育成プログラムです。企業版の『青年海外協力隊』といえばイメージしやすいかと思います。

(青柳)

とてもいいプログラムだと思っていて、以前からぜひ来ていただきたいと思っていました。というのも、SDGsの達成には共感がとても重要で、現地に行かないとわからない共感がそこに生まれ、自分ごと化していくことで『パートナシップ』を形成していくことができます。それを人材育成プログラムの提供として事業化しているのはすごい取り組みだと思います。

(魚住)

だいたいどれくらいの期間で留職されるんですか?

(西川)

企業にもよるのですが、短くても3ヶ月、長くて9カ月くらいです。この事業を通して、遠い世界で起きている社会課題をいかに自分ごと化できるかに焦点を当て、様々な取り組みを行っています。

(青柳)

例えばこれまでにどんな国でどんな企業の留職を行ってきたのですか?

(西川)

食品会社からラオスの栄養改善に関する食品を生産している企業に派遣された20代の方は、彼らが手掛ける栄養補助食品からより手軽に栄養を摂取できるように自身の経験を活かし成分の分析などを行い、結果栄養価が10%から20%改善した、という事例があります。

(青柳)

日本で培った自身の経験やスキルが現地で役に立つとなると、本人としても嬉しいですね。

(西川)

本当のその通りで、事前研修では『現地で自分にできることなんてない』と謙遜していた社員の方々は、日本企業で鍛えられてきたノウハウ自体が現地にとっては歓迎されるので、このプログラムの後自信をもって帰国される方も多いです。

(青柳)

現在コロナ禍において海外に社員を派遣するのは難しくなってきていると思うのですが、現状どのような取り組みをされているのですか?

(西川)

新型コロナウイルスにより、ヒトの移動が出来なくなったことで、春先には全ての事業がストップしてしまい、今後の事業存続に向けて新事業の創出を行っているところです。現在留職先を国内に注力し、国内の社会課題の解決に向けた活動を行っている団体に大企業の社員を派遣する『国内留職プログラム』の展開を始めました。スキームは海外の留職と同じもので、派遣先は震災の影響を大きく受けた宮城県などになっています。場所は国内に変わりましたが、派遣された社員の方々が得られる経験や価値は今までと同じだと思っています。

(青柳)

国内留職プログラムのほかに、何か新しくはじめられた事業はありますか?

(西川)

フィールドスタディー事業は完全オンラインで行っています。その他ですとVR技術を使った社会課題の疑似体験プログラムというのも開発中です。疑似体験は社会課題解決に必要な意識づけや興味関心を持つという部分で役に立っています。以前こちらの番組に出演されたSALASUSUさんともパートナシップを組み、カンボジアの生産現場にVRカメラを置いて撮影をさせていただいています。

(青柳)

最後に、クロスフィールズが描く『持続可能な社会』の展望についてお聞かせください。

(西村)

『社会課題』という人類共通の課題に向かって、異なるセクターの人々がつながって、新しい社会を生み出していくのが我々の目標です。団体名の通り、フィールドをクロスさせることで、新しい競争を生み出したり化学反応を起こす、ということを目指しています。それによって社会が少しでもいい方法に動いていくといいなと思っています。

3.クロージング・トーク

(魚住)

本日お越しいただいた西川さんのお話を聞いて、いかがだったでしょうか。

(青柳)

『現場』の持つ力を企業や社会課題解決につなげる、素晴らしい仕組みだと感じました。以前国連やJICAにいたころ、緒方貞子さんという方にお世話になったのですが、彼女はいつも『現場主義』を唱えられていて、現場の大切さを教えられました。実際、アフガニスタンにいるころ、更地に都市をつくるという大変困難なプロジェクトを担当していた時も、現場にいたときに聞いた言葉に励まされて取り組むことができました。

現場を見せること、参加してもらうことでかけがえのない経験になりますし、パートナシップを広げたり共感を広げたりすることによって、SDGsの解決の力を世界全体に広げていくためにも必要なことだと感じました。


注:本記事は放送内容の完全な書き起こしではなく、必要に応じて要約や加筆・修正を行っています。また、敬称は省略させていただいています。

「SDGsティーチャー」は、TOKYOFMで2021年10月まで放送されたラジオ番組です。
同番組では、サステナビリティを実現し社会課題を解決するための活動を行っている団体 や企業からゲストをお招きし、そのきっかけや今後の目標についてお聞きしました。

AuDeeのラジオアプリからも、過去の放送をご視聴いただけます。https://audee.jp/program/show/51837