魚住:前川さんのこのような考えに至った経歴をご紹介すると、大学卒業後に一度不動産企業に就職され、そのあと大学院に行きインドや南アジアの女性やジェンダーについて研究されたのち、JICA本部を経て外務省の専門調査員として在スリランカ大使館にて勤務し、その後kelluna.を立ち上げたそうなのですが、そのきっかけを教えてください。

前川:元々大学院の時に女性のスキル教育やジェンダー格差などを専門にしていたので、その分野でプロフェッショナルになっていきたいという想いはずっとありました。JICAや外務省の業務において紛争被害にあった女性と接する機会があったのですが、その際に長期的な日本政府による支援はすごくありがたいし、必要ではあるものの、5年、10年かかるよりも、自分たちは明日の生活を笑顔で過ごせる環境が欲しいという多くの女性の声を耳にして、私もそうだよなって思ったんです。

そこで政策など大きな枠組みでの支援ではなく、草の根レベルのボトムアップで彼女たちと密に関わって笑顔にできるようなことが実現できる事業をやりたくてブランドを立ち上げました。

規模としては現地で13人ですし、日本で買って下さる方々も大量生産で売っているメーカーさんと比べるとまだまだですが、雇用しているスリランカの方やkelluna.を身に着けてくれている日本の方一人ひとりの笑顔を大切にしていきたいと思っています。彼女たちが私たちのブランドコンセプトに触れることによって、少しでもエネルギーになったり、前向きになったりするリマインダーになれば、笑顔を作っていけるのかなと思っています。

吉野:コロナ禍において多くの人が運動不足という問題を抱えていると思うのですが、kelluna.の商品の需要は同時に高まっているのでしょうか。

前川:そうですね、緊急事態宣言後の出控えの時期に売り上げが大きく上がりました。これは一つは「宅トレ」が流行って、YouTubeでもたくさんのトレーニング動画があり需要が高まったことによります。もう一つは、地球が悲鳴をあげている状態の中で、自分の食べるものや身に着けるものがどういうプロセスで作られているのか、ということを考えてお金を使う人が今までよりも増えてきたと感じています。我々はサステナビリティとかエシカルということを大事なキーワードにしていますので、そういう中でkelluna.を見てくださる人が増えてきたと感じています。

吉野:ご自身の経験に基づいてブレずに本質を貫いていて素晴らしいですね。

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