DAY18で整理した通り、SDGsとESGはサステナビリティを推進するための車の両輪です。ESGとSDGsは別々に行うものではなく、一緒に推進することでその真価を発揮します。しかし、DAY22で述べたとおり、企業にとって国際目標であるSDGsへの対応は任意ですが、市場競争ルールであるESGへの対応は必須です。そのため、ESGの方だけが先行し、SDGsが後づけで紐づけられるという状況が一般化しつつあります。ESGとSDGsの紐づけとは、具体的にどのように行われているのでしょうか。典型的には、重点課題(マテリアリティ)とSDGsを紐づける方法です。
この方法では、DAY23で解説した手順でESG対応を行い、マテリアリティを抽出した後、それらがどのSDGsゴールに貢献しているか説明します。多くの場合、統合報告書やウェブサイトなどにマテリアリティの一覧があり、各項目に対してSDGsのロゴが視覚的に配置されています。これにより、実際にはESG対応をしただけであるにも関わらず、対外的にはSDGsにも対応しているように見せることができます。また、ESGとSDGsへの対応を一度に行うため、全体としてこれをサステナビリティへの取り組みとして示すことができます。
主要なサステナビリティ報告基準の一つでであるGRIスタンダードと、SDGsの企業のレポーティングを扱うSDGs Compassの両方の発行元となっているGRIも、このやり方を推奨しています。SDGs Compassには、ESG対応の中にSDGsを取り入れることは、「マテリアリティの評価を再検討し、報告内容が持続可能な開発のための2030アジェンダおよびSDGsと整合することを確実にする機会」と定義しています。つまり、先にESG対応のマテリアリティがあり、SDGsとはそれを国際的な潮流に整合させるための「確認」という位置づけで捉えられています。
ESG投資において評価の高い企業の統合報告書やサステナビリティ・レポートを読んでみると、この方法を採用している企業が多いことに気が付きます。現時点では、ESG評価機関からも受けが良い方法だと考えて良いでしょう。
加えて、SDGs Compassでは、マテリアリティの特定ではなく、自社の非財務パフォーマンスを測定する際に、SDGsのゴールやターゲットを参照する方法も紹介されています。自社の活動が社会や環境にどのようなプラスとマイナスの影響を与えているかについての分析にあたり、サステナビリティ報告の示している基準・指標に加えて、SDGsゴール・ターゲットの観点を加えて考えるというものです。