魚住:子どもたちが教育を受ける環境についてですが、解決すべき課題はどのようなことなんでしょうか?

吉野:SDGsに関連するところで言いますと、ESDという言葉があります。Education for Sustainable Developmentの略で「持続可能な社会の創り手を育む教育」という意味です。このESDは、2002年の「持続可能な開発に関する世界首脳会議」で日本が提唱した考え方なんです。教育を通じてSDGsを達成していこうということで日本がイニシアティブを取っています。国内でも2017 年に公示された小中学校新学習指導要領において、学校は子どもたちが持続可能な社会の創り手となることができるようにすることが求められる、と定められています。

その中で、日本の先生は一人一人がカバーする責任範囲が広く、残業も多いと言われていますので、日本の教育が抱える課題の一つだと思います。先生というのは、やはり教育において中心的な役割を果たす訳ですし、生徒たちのロールモデルになる訳ですから、先生の労働時間を少しでも軽減してイキイキと働けるような職場環境を作っていくことが必要です。先生自身が一番苦労されているかと思いますが、先生の精神力や気合と根性で何とかなるかというとそういう訳ではなく、制度面で時短勤務や育児休暇を一層充実させていったり、360度評価などで優れた先生を透明性・客観性高く評価・処遇するような仕組みを作ることで先生への負荷を減らし、よりクリエイティブなことに投入する時間を増やしていくことが必要ではないかと思います。

魚住:先生がロールモデルというのはすごく響きました。先生がすごく楽しそうに自分たちに教えてくれている姿を見ることで、日本っていいなとか、大人って楽しそうだなって思ってくれるのって大事ですよね。

吉野:日本は教科指導以外にも生徒指導や部活動指導などがありますからね。

魚住:そっちもやるんだ、と思いました。バレーボールやったことないのにバレーボール部の顧問になってルールを覚えるところからやったりとか、大変ですよね。

吉野:はい、1人1人の時間は限られていますからね。教師を引退した方の再雇用制度を充実させるなど制度・体制面で充実させ、先生1人1人の時間を作ることで、よりクリエイティブな仕事に時間を使っていくことが必要だと思います。

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