吉野:クリーンネクストの事業は、SDGsとの関わりで言うと、特にどの目標をターゲットにしていますか?
西山:はい、私の事業では目標5の「ジェンダー平等を実現しよう」と目標8の「働きがいも経済成長も」をターゲットにしています。
吉野:業務の中ではどの辺に課題を感じていますか?
西山:特にジェンダー平等に関しては、清掃業界は女性が結構多いんですが、管理職になると圧倒的に男性が多いんですね。女性がなかなか責任者レベルにならないというのは、働き方にもよると思うんです。この仕事は働くママさんが結構多かったりするんですが、働く時間に制約がかかってしまうので難しい場合があります。今いる責任者の方の仕事を見て、自分には業務が多すぎる、ということで責任が持てないと気負ってしまってなかなか登用が進まないというところがあると思います。ただ、実際には本当に男性でないとダメかというとそうではないですし、女性が活躍している現場もいくつもあります。そういう女性が活躍しているところは何が違うかというと、やはり業務の割り振りがとてもうまいんです。サブの方やフロアリーダーと言われている方々に分担して業務を行っています。そうすることで女性でも責任者や管理職が務まります。どうしても男性中心になりがちなところで女性に目を向けて頂いて新たな働き方を確立していきたい、という風に思っています。
魚住:私は自分自身掃除がとても苦手で、お風呂掃除とか家族で分担しますがそれぞれ目のつけ所が違うので「この壁の赤カビをなぜ取らない!」とかありますが、プロの方は髪の毛一本から天井までご覧になっているので、そのスキルってすごいものだと思います。皆さんこうしたスキルを持っているというのは誇りに思っているのでしょうか。
西山:そこは分かれますね。すごくプライドを持って、私のやっている仕事はすごいんだ、と思っている方もいれば、清掃について世間が持つネガティブなイメージで謙遜する方や、日々の仕事が当たり前になっている方も多いです。
魚住:すごいスキルだと思います。働き甲斐を持ってほしいとかそういう活動はされているんですか?
西山:そうですね。私のチェックリストを現場の方にも使って頂くのですが、最初は「こんなにですか?できません」という反応で、文字にするとすごく多いように思うんですけど、皆さん実際やっているんですよ。ですので、前泊者の影をなくしてゼロに戻すという、いかに自分たちのやっていることがすごい仕事なのかということをスタッフの方に伝えています。それに対してお客様が対価を支払っているんだ、というところも当たり前のようなんですがお話すると意外とはっとされるんですよ。あ、私たちの仕事はきれいにすることではなく、空間を作ってそれを提供していることなんだというところに新たな気付きを持って頂くことがあります。
吉野:視点を変える訳ですね。仰った働き甲斐に必要な要素として、活力、熱意、没頭の3つあると言われていますが、西山さんは正にこれを実践されていますね。情熱を持って没頭をしながら働き甲斐を持って清掃をして、そして、ただきれいにするだけではなくて、空間を作るという新たな価値を生む仕事をされている訳ですよね。イエローハット創業者の鍵山秀三郎さんはそうじ道や「日本を美しくする会」というものをされていて会員が10万人ぐらいいるそうです。素手で便器を掃除したりすることで感謝の心や感動する心が芽生えたりするそうです。そして、一番のメリットとして、「気づく」ということが養えるそうなんです。気づくというのは相手を喜ばせようとする心から養われるものであり、そういう心を養うのが掃除だということなんです。
魚住:正に西山さんがやっておられることですよね。
西山:仰るように「気づく」というのがなかなか難しいんです。掃除でも日々の生活でも「気づく」ってある日突然身に付くものじゃないんですよね。日々の生活の中で少しずつお客様目線を持つかどうかで変わってくると思います。
吉野:日本では小学校など自分たちの教室を掃除しますが、海外だと清掃員の方がいて自分たちで掃除をしなかったりするんですよね。海外の人で日本に来ると街にゴミが落ちていないといって驚く方が多いんですが、そういった掃除の習慣が小さいころから身についていて、日本の文化になっていると言ってもよいかと思います。