魚住:コロナ禍で高級食材が売れなくて困っているというニュースを目にすることも増えたのですが、そうした食材を扱うことも増えましたか?

伊藤:増えましたね。特にハレの日需要という、人が集まるときの食品がたくさん余っています。例えば、養殖の真鯛は皆さん結婚式とかで使うんですが、そういったものが余って養殖業者さんとかは本当に困っています。あとは居酒屋とか焼き肉屋といった時短営業をしている飲食店では客足が遠のいてしまい、黒毛和牛などの高級食材がだぶついています。また、一斉休校もあったので給食に使うようなお米などの食材なども余ってしまっています。

吉野:そうした食材はもし tabeloopさんが扱わない場合は廃棄になってしまうということですか?

伊藤:はい、ほとんど廃棄です。

魚住:もったいない!

伊藤:ただ捨てるだけではなく、産業廃棄物として捨てるのでお金もかかりますので、タダでも良いから引き取って欲しいという食材がたくさん出ています。他にもアイスがあります。アイスは冷凍庫で保管できるのですが、新商品が出てくるので余っていきます。そしてアイスは冷たくて水分が多いので、廃棄をするときに非常に手間がかかります。

吉野: tabeloopは、飲食店などのコンサルティングを手掛けている企業が新たな事業として始めたそうですが、きっかけは?

伊藤:元々飲食店の新規立ち上げのお手伝いをさせて頂くのが本業だったんですけど、その中で卸の方から三分の一ルールという法律ではない商慣習があるという話を聞きました。例えば、賞味期限6ヶ月の商品であれば、残り2ヶ月になった時点でスーパーとかは引き取れずに返品されます。ですので、作る方としてはその前に売ったりしないといけないという慣習なんですね。あるメーカーさんから賞味期限があと2ヶ月あるけどもう売れないのでなんとかしてくれないかとご相談頂いたんです。そういうものは普通に売るとただの安売りになってしまうので、ブランドが傷ついてしまうのですが、我々は中身が見えないように箱に詰めて福袋的に販売するようにしたんです。賞味期限は残り2ヶ月しかないけども値段は半額です。

魚住:ワクワク感がありますね。

伊藤:そういうことをしていたら、うちはお菓子ではなくてお米を入れて欲しいとか肉を入れて欲しいということになってきまして、さすがに肉とお米とお菓子がセットになっているものは売りづらいので、そういったものを売れるようなサイトを立ち上げたという経緯です。

吉野:ルールではなくて、商慣習として今でも残っているのですね。 tabeloopさんはもともとはSDGsを前面に打ち出していなかったそうですが、SDGsを打ち出していくようになったきっかけは?

伊藤:既存のビジネスだけを続けていくのと、新しく社会や環境課題の解決をするビジネスに取り組むのとでは、これからのビジネス展開が大きく違うだろうなという風に感じて、SDGsを軸に社会貢献できるビジネスに参画することにしました。ただ単に訳アリ商品を安く買えますよというよりは、我々はこうしたことを通じてSDGsに貢献してますということで、応援してくれる方や企業さん・団体さんが一気に増えたと感じています。SDGsという目標があることで外務省や官公庁、大企業とのコラボが実現したり、食品ロス削減の取組みにお誘い頂いたりとか、これまで交流がなかった企業・団体さんとのコラボレーションが非常に増えました。また、採用活動も一気に変わってきています。今は優秀な学生さんは社会課題の解決に非常に強く関心をお持ちですので、トップの大学の学生さんからインターンさせてくれませんか、というお問い合わせを頂くことも増え、非常に驚いています。

吉野:最近は企業としてSDGsなどに取り組んでいるということをしっかりと打ち出していかないと優秀な人材から選んでもらえないという状況がありますから、人材獲得という観点でもこうした取り組みを企業が打ち出していくことの重要性は高まっていると言えます。今後ビジネスを拡大していくにあたって、どの辺りに注力されていますか?

伊藤:はい、生産者さんとの関係をもっともっと強めていきたいと考えています。昔であれば言われた通りのものを作って、そのまま納めていたという方が多かったんじゃないかなと思うんですが、今は皆さんのお口に届けするものなので極力いいものを、環境にも配慮して生産したい、という生産者さんが農業だけでなく漁業でも非常に増えてきていますので、そうした方々との関係をもっと強めていきたいと感じています。

魚住:消費者としては選択肢が増えるのでありがたいですね。

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