日本のSDGs達成度

「日本は先進国なのでSDGsはあまり関係ないのではないか?」と誤解している方がたまにおられます。

例えば、ゴール1が示すような「一日1.25ドル以下」で暮らしているような人は、日本にはほとんどいないので、ある程度は無理もないかもしれません。

しかし、実際のところ、

日本はSDGsから見て優等生でも何でもありません。

2018年現在の日本のSDGsの達成状況は以下のような状況にあります。

Sustainable Development Report 2019

緑色が達成しているゴールですが、黄色以下は未達成となります。赤に近づくほど未達成の状況が深刻です。日本は、ゴール5、12、13、17と、4つも最低評価のゴールを抱えています。特に、5のジェンダー平等については世界最低レベルと言われています。

SDGsの232指標に基づき、国連に提出する正式な日本としてのSDGsの計測指標については、外務省のJapan SDGs Action Platformにて日本語で公開しています。これだけ見ても何のことだかイメージがつきづらいとは思いますが、政府及び国連としての日本のSDGs達成度を測る正式な評価基準としては、こちらをご参照ください。

SDGsの示す課題の解像度

しかし、そうは言われても、実際に日々の暮らしの中で日本で極度の貧困下で暮らしている人を見ることはほぼありません。にもかかわらず、ゴール1の「貧困をなくそう」を含むほとんどのゴールが「未達」と評価されてしまうのはなぜなのでしょうか?

それは、SDGsの示す課題を大きく捉え過ぎているためです。カメラで言えば、解像度の低いままぼんやりと課題を捉えているために、大雑把なものしか見えていない状態にあります。

典型的には、「SDGsとは何か?」ということについて、SDGsのカラフルなロゴマークに書いてある標語のことだと思っている方が割とたくさんいます。例えば、ゴール1であれば「貧困をなくそう」、ゴール2であれば「飢餓をゼロに」、ゴール3であれば「すべての人に健康と福祉を」などです。

しかし、これらはSDGsそのものではありません。もともと、国連からSDGsロゴの製作依頼を受けた米国のデザイン会社であるTrollbäck+Companyのヤーコブ・トロールベック氏が考えた単なるロゴマークの一要素でしかありません。

日本語のロゴは、2016年にこのSDGsロゴが日本にやってきたときに、最初は国連広報センターが直訳に近く無機質な標語を当てはめていました。その後、博報堂のプロボノ(無償協力)により現在のような魅力的なキャッチフレーズになったという経緯です。

要するに、このロゴマーク上の標語はSDGsそのものではありません。では、オリジナルのSDGsはどこにあるのでしょうか?

それは、実際に2015年に193か国により合意された『我々の世界を変革する: 持続可能な開発のための 2030 アジェンダ(邦題)』という外交文書の中にあります。

そこでは、SDGsはより正確な文章として表現されています。例えばゴール1は「貧困をなくそう」ではなく、「あらゆる場所のあらゆる形態の貧困を終わらせる」となっています。

加えて、各目標にはより詳細な課題の姿を表す複数のターゲットがぶらさがっています。例えば、ゴール1には7つのターゲットがあります。最初の一つは「2030 年までに、現在 1 日 1.25 ドル未満で生活する人々と定義されている極度の貧困 をあらゆる場所で終わらせる」となっており、ゴールそのものよりも解像度の高い課題が表現されています。

これらターゲットを17ゴール分すべて足し合わせると169個あります。また、それらのターゲットの達成状況を測定するための指標が232個あります。この17ゴール、169ターゲット、232指標でSDGsを捉えると、ロゴマークの標語のみで捉えていた際よりも遥かに高い解像度で課題を把握することができます。

更に、冒頭の評価で参照した『Sustainable Development Report』は、国連が示す232指標以上に、現実の世界の実態を数値を通して把握し、評価を行っています。こうしたレポートを活用することで解像度を一層高めることができます。

こうして解像度を上げて課題を考えると、日本国内にもSDGsの示す課題状況が多数存在していることが分かるようになります。

国内に存在する具体的なSDGsの課題

日本国内におけるSDGsの課題状況に関する解像度の高い観察の例として、Sustainable Development Reportをベースとして以下のようなことが言われています。

ゴール1:貧困をなくそう ☞絶対的貧困はないが、購買力の低い相対的貧困層が存在

ゴール2:飢餓をゼロに ☞飢餓はないが、穀物生産効率(土地及び窒素発生量)が悪い

ゴール3:すべての人に健康と福祉を ☞身体的に健康な人は多いが、生活の質に満足している人は少ない

ゴール4:質の高い教育をみんなに ☞教育水準と普及度は最高レベルだが、質の工夫少なく学級崩壊も増加

ゴール5:ジェンダー平等を実現しよう ☞女性の社会進出が遅れており、男女の賃金格差も高い、避妊割合が世界的に見て低い

ゴール6:安全な水とトイレを世界中に ☞国内では浄水の再利用率が低く、輸入では水資源枯渇を助長している

ゴール7:エネルギーをみんなにそしてクリーンに ☞再生可能エネルギー利用が進まず、発電に伴う二酸化炭素排出量が多い

ゴール8:働きがいも経済成長も ☞長時間労働で生産性が低い、ブラック企業やセクハラ・パワハラの問題も存在

ゴール9:産業と技術革新の基礎をつくろう ☞産業力は国際的に高水準だが、破壊的イノベーションが少なく環境変化への対応が遅い

ゴール10:人や国の不平等をなくそう ☞格差拡大と少子高齢化の進行の一方で、結婚・子育てや孤独化対策は遅い

ゴール11:住み続けられるまちづくりを ☞東京一極集中による公共交通パンク・老朽化・騒音、賃料高騰、地方過疎化

ゴール12:つくる責任、つかう責任 ☞大量消費型の社会システム、ごみ発電が少ない、亜鉛酸ガスや窒素発生物の輸入が多い

ゴール13:気候変動に具体的な対策を ☞発電に伴うCO2発生量が膨大、被害者増加、炭素税や排出権取引が脆弱

ゴール14:海の豊かさを守ろう ☞近海での乱獲激化及び化学薬品、食品、排泄物、ごみの廃棄による水質悪化

ゴール15:陸の豊かさも守ろう ☞絶滅危惧種の野生動物の国内生存率が低く、海外輸入を多く行っている

ゴール16:平等と構成をすべての人に ☞犯罪発生率は少ない方だが、安全体感率は低い、メディアが既得権化している

ゴール17:パートナーシップで目標を達成しよう ☞ODAを含む海外向けファイナンスに秘匿性が高く、譲許性が低い

上記を見ると分かる通り、SDGsは海外の事だと考えず、国内の社会課題解決にも目を向けることが必要です。

ゴール1の貧困の例では、確かに一日1.25ドル以下で暮らす人は日本にはほとんどいませんが、日本の物価と平均所得から見て、相対的な貧困層は7人に1人いると言われています。

実際、東京都においてすら、義務教育の小学校で唯一家庭の負担となる給食費を払えない親が多くいます。こうした家庭の子どもたちが義務教育が終えた後の高校や大学への進学を経済的理由により断念するケースは後を絶ちません。

日本の相対的貧困層の多くは、周囲からの見られ方を気にして、実際の経済状況を明らかにしていない場合が多くあります。しかし、隠れていてもその貧困のしわ寄せとして、子どもの将来の選択肢や幸せな家庭を持つ自由を奪っているのです。

最も日本と遠いと思われる貧困問題ですらこのような状況です。

その他のゴールについても、日本における社会課題解決は強く求められています。

地方創生とSDGs

日本国内におけるSDGsの課題状況を示す例としてもう一つ挙げたいと思います。現在、日本全体の課題となっている「地方創生」も実はSDGsの示す課題の一端です。

地方創生の根本的な課題がどこにあるかというと、都市への人口の異常な集中傾向です。東京をはじめとする首都圏では過密化により住宅や基礎的インフラの提供が追い付かず、既存施設の老朽化にも対処できず、その他様々な無理が生じています。莫大な予算をかけることでどうにか耐えていますが、借金を前提とした運営でなければ行政サービスの質も落ちていかざるを得ない状況にあります。

一方で、人が奪われていく地方の方は深刻な過疎化に見舞われています。日本では人口減少や少子高齢化も相まって、地方の活力が失われていく悪循環に歯止めがかからなくなっています。つまり、中央も地方も持続不可能な状態といえます。

実はこうした都市への人口集中というのは、日本だけの問題ではなく、世界のほぼあらゆる国で同様の事が起きています。海外では日本よりも深刻な状況に陥っている場合が多く、例えばゴール11が示す都市の状況では、都市住民の10人に9人は汚染された空気の中で居住し、ごみ収集や便利な交通アクセスのある人は半分程度で、4人に1人はスラムに似た環境で暮らしていると言われています