吉野:日本は海に囲まれているので、日本中のどこの町でもこの取り組みは可能だと思いますが、この仕組みを導入する際に重視するポイントはどのようなことでしょう?
中川:ツッテ西伊豆ではポイントが2つあると思います。一つ目は、買い取りを必ず現金ではなく、地域通貨や地域クーポンで行うということを重視しています。というのは、釣らせて頂く魚というのはその地域の大切な資源なので、それを現金で交換して外に持ち出されてしまうと資源が外に行ってしまうので、必ずお金も地域の中で回して持続可能になるように地域通貨や地域クーポンを使うということを大事にしています。二つ目は、漁師さんとかが充実しているような町ではやらない方がいいと思っています。というのはやはり魚っていうのは地域の資源ですし、漁師さんが本業として獲ってお金にするという仕事をされて回っているのであればこの仕組みは邪魔になってしまうので、そういう場合はその方々のお仕事を続けて頂くために違う方法が良いと思っています。西伊豆みたいに漁師さんが足りないのであれば、一つの解決策としてやるということにしています。実はいろいろな地域からこのツッテ西伊豆の取組みをうちでもやりたいというお声がけは頂くのですが、ヒアリングをさせて頂いてお断りする方が多いんです。
魚住:漁師さんがちゃんといらっしゃるところは邪魔しないということですね。そういうところは釣り人さんが来すぎても困りますもんね。
中川:そうなんです。そういう場合は魚の買い取りではなくて、釣った魚を地域の飲食店や宿と繋げて、もっと違う場所にきちんとお金を落としてくれて、釣り人や観光客もお金を落とすことが楽しいと思えるような仕組みを作るようにしています。
吉野:地域活性化というところからこうした発想が出てきていると思うのですが、元々地域活性化をされたのはどういうきっかけなんでしょう。
中川:私は生まれが富山県のちょっと田舎の方で高校まで育って、あっちに住んでいるときはカラオケしかすることがなくて東京に憧れていたんです。それで大学から東京に来たんですけど、東京に数年住んで正直東京に飽きちゃったんですね。流行り物がなんだか着せ替えみたいな形でどんどん街が変わっていって、ひたすら消費をする場所だなって思っていた中で、そのうちに地域を求めるようになっていろんなところに旅行に行ったら、地域ってそれぞれこんなに特徴があって、一回なくなったら絶対に取り戻せないようなものがたくさんあってものすごく素敵だなって思うようになったんです。それで地域の人と喋っていると、昔の自分と同じようにもう何もなくて、カラオケしかなくて本当に東京に行きたいって言われて、本当に気持ちはわかるんですけど、みんながそう思っちゃって、地域の特色がなくなっていったら取り返しがつかないんじゃないかってすごい不安に思うようになったんです。それで地域の方々がもっと自分たちをリスペクトできて、自信を持ってそういった地域ならではのものを楽しんで持続していけるようなお手伝いが何かできないかなって思って、地域活性の仕事を目指すようになりました。
吉野:素晴らしいですね。