魚住:なるほど。日本ではどういう状況なのでしょう?

吉野:働く環境の整備などは、日本で働く私たちにとっても身近な課題です。サプライチェーンの上流における人権侵害や、日本国内で働く外国籍の方々の人権侵害が起きていないかということも見ていく必要があります。

魚住:コロナ禍で失業する人なども増えていますが、SDGsの視点では日本の働き方は
どう評価されているのでしょうか?

吉野:日本の労働状況は長時間労働などよくないイメージがあるかもしれませんが、諸外国と比べると福利厚生、医療制度、組合、社会保障などは非常に恵まれています。また、年功序列制度を取っている企業も多いかと思いますが、長く働くことで一定の割合で給与が上がっていくというのは、生活設計をする上で非常に助かりますよね。

魚住:はい、先が見えているのでいつ家を買おうかとか、子どもの教育とか道筋が見えます。

吉野:そうですよね。これに対して海外で多いジョブ型だとポジションや職種に給与が紐づいていますので、勤務期間が長いからといって給与があがらないため、給与をあげるには期待以上の成果を出したり、場合によっては会社を変えないといけない訳ですから、年功序列は働く側としてのメリットが多くあると言えます。長く働くという大きな前提がありますので、研修などの育成体系もしっかりしている会社さんが多いのではないでしょうか。また、政府が主導した「働き方改革」により、同一労働・同一賃金が義務化されたり、残業の上限が原則⽉45時間で超えた場合の罰則や、年5日の年休を労働者に取得さ  せない場合の罰則ができるなど、法律の整備も進んでいます。これは良い点だと言えます。

魚住:課題も多いのでしょうか。

吉野:はい、これまでの平均では、女性の給料は正社員であっても男性の75%程度と言われています。男女という差が給与の差につながる理由はよく分からないですよね。また、同一労働・同一賃金は義務化されましたが、違反しても罰則がありません。このため、引き続き課題があると言えます。また、残業時間も課題です。OECDによる日本の残業時間は22位となっています(注:2020年は25位)。

魚住:トップ3に入っているかと思いました。

吉野:そうですよね。データが間違っているんじゃないかと疑問に思うかもしれませんが、正規雇用と非正規雇用というのがポイントなんです。このデータには非正規雇用、短時間労働のパートタイムワーカーも含まれています。フルタイムの一般労働者労働時間で見てみると年間平均2,018時間に対して、非正規雇用はその約半分ですので、平均すると全体としては高くないという数字になっている訳です。また、15歳~64歳の男性に絞って比較したデータでは、日本はOECDの中で1位というデータもあります。

魚住:やはり1位なんですね。働きすぎですよ~皆さん。休みづらいという文化がいまだに日本ではありますよね。スタッフさんが「うん、うん」ってうなずいてます。笑

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